新疆一人旅の記録

新疆の旅・やっぱりいろいろな事があった
(11月19日)

○やっぱり禁酒の店がある
  カシュガルでタクシーの運転手と一緒に食堂に入った。私が羊の焼き串(シシカバブー、羊肉串)が食べたいと言ったら、新疆の料理があるところに連れて行ってくれたのである。私は当然の如く、ビールを飲みながらシシカバブーを食べたいと思ったが、意外にもビールは無いと言う。意外にもと思ったが、ここはイスラム教が盛んなところだから、これは意外でもなんでもないことらしい。普通の安い食堂だった。イスラム教の戒律に従ってラマダン(断食)もあるとのことであった。

○ やっぱりウイグル語ばかり
  カシュガルで一人で、夜店の屋台へシシカバブーを食べに行った。そこでは聞こえるのはウイグル語ばかりだった。注文は中国語で通じたが、ここでは中国語を話している人なんか、一人も居なかった。カシュガルにはテレビでもウイグル語専門のチャンネルが幾つかあった。やはりウイグル族がたくさん住む所なのである。だからウイグル語ばかりなのは、当たり前なんだけれど、ホテルでもタクシーでも中国語だったので、中国語でない巻き舌の言葉ばかりになると、あれっと思った。それからもう一つの印象は、やっぱり夜店の屋台は羊ばっかりだなーと思ったことである。それにしても今回の旅では羊の焼き串をよく食べた。

○ やっぱりウイグル時間に注意しなければならない
  新疆は北京との時差は2時間有るということは旅行に行く前から聞いていた。新疆でもカシュガルまで来ると、もっと時差が有るらしく、朝の8時半ごろようやく明るくなる(10月始め頃のこと)。カシュガルからトルファンへ行くための汽車のキップを、カシュガルで受け取る事になっていた。朝の8時がそんな暗いとは思わなかったので、8時と時間を指定して、北京の旅行社から連絡しておいて貰った。カシュガルに着いてから、朝の暗さにチョッとビックリして、念のため確認の電話を入れたら、「何を言っているのよ、朝の8時は真っ暗でしょう」などと言われてしまった。多分そんなことを言ったらしい。実際に新疆には新疆時間と北京時間があって、二時間の表示の差がある。新疆の時間の8時なら問題は無いが、北京時間の8時だと真っ暗なのである。それで、キップの受け渡しは夜に変更したのだが、やっぱり現地の人との約束では新疆時間には気を付けなければならない。変更後の時間は、夜の10時の受け渡しになった。あまりにも遅いと思ったが、現地時間の夜の8時であればそんない遅くもないのである。

  新疆の踊りを見ているときに、日本人のツアー客と話したとき、新疆は北京と時差が2時間もあるのだと話したら、どうりで朝明るくなるのが遅いわけだ、などとのんびりした事を言っていた。ツアーに参加して移動するなら、ホテルも飛行機も全て北京時間に統一されているだろうから、新疆時間が有るのさえ気が付かないのかもしれない。

○やっぱり警官の中にウイグル族は少ないのか
  カシュガルからトルファンの汽車の中には、かなりの警乗の警官が乗っていた。普段は事件などないから暇なようであった。トルファンに近くなって、私のコンパートメントに一人の警官が遊びに来た。同じ部屋に若者の客が居たから、その若者の知り合いだったかもしれない。私が日本人だと知って、日本の給料はどうかなどと聞かれた。私も幾つか質問をしたが、それは警官の中にウイグル族が居るかと言う質問だった。私が一人でいる時の暇なときに、車掌にウイグル族の衣装を着せて、サービスをさせたら、受けるのではないかなどと考えていたのである。特にウイグル族はエキゾチックな美人が多いから、宣伝効果は絶大だと思いついて我ながらいいアイデアだと思った。

  実際に他の地区の鉄道では、車掌に派手派手なたすきを掛けさせて、愛嬌を降りまいている長距離列車もあった。しかしこの南疆鉄道の車掌の中に、あまりウイグル顔の車掌が見えないように思えたものだから、ウイグル族が多い地区にしては、ウイグル族の採用が少ないのではと思ったのである。それで警官の方もどうなのかと思いついたのである。遊びに来た警官の答えは、ウイグル族の警官も居るとのことであった。次に車掌の中にウイグル族はいるかと聞いてみると、4人居るとのことであった。何人の中の4人であるか聞かなかったが、この列車の車掌としても、15人くらいは居たようだから、人口からの割合としてはずっと少ないのではないかと思えた。

  警官の数は"居る"と強調した答にも関わらず、何人居るとの答えが無かったから、本当は少ないのかもしれない。この質問で、警官に微妙な問題を聞いてしまったようだ。やはり治安を担当する職業には少数民族が少ないのかな、などと考えた。もっとも、ウイグル族は教育水準が低いから採用が少ないという答えも有りうるかもしれない。これは私の見方ではない。警官の回答を予想して考えただけである。とにかく、少数民族、特にウイグル族とチベット族については微妙な問題があるのは確かなことであろう。

○やっぱり中国製日本の焼酎は臭い
  ウルムチで二晩目もウイグルの別の歌舞団を見ようと思ったので、あるホテルに歌舞団の上演があるかもしれないと聞いて行ってみた。行ってみたが新疆の踊りは無くて、「平政」という日本料理屋があった。本当は屋台みたいなところで、羊の焼き串を食べようと思っていたのであるが、他のところに行くのが面倒くさくなって、そこで食事をする事にした。食べ放題で60元と安かったからでもある。こんな内陸でも刺身があった。メニューを見ると日本の焼酎があった。これを一本買って、残りは持って帰って飲んでもいいなと考えた。しかしこれを注文して飲んでみたら、本当にがっかりしてしまった。中国の焼酎(白酒)の臭いがするのである。高い日本の焼酎を注文した理由は、中国の焼酎のいやな臭いが嫌いだったからなのである。ああ、それなのにそれなのに、日本の焼酎から白酒のくさい臭いがするとは。

  がっかりしながらラベルをよく見ると、日本の焼酎なのであるが、生産地が内モンゴルとなっている。やっぱり中国製の日本焼酎は白酒の臭いが混ざるらしい。せっかく買った焼酎が飲めないなんて悔しい。と言って捨ててしまうなんて勿体無い。そこで、これは不味くて飲めないので、もっと高い焼酎を買うから、換えてくれないかと店の人に聞いてみた。もっと高い焼酎とは"いいちこ"のことで、これなら高くても、臭い焼酎を我慢して飲むよりはずっといいと考えたのである。そうしたら"いいちこ"は品切れとのことで、臭い焼酎の代金は、飲んだ分だけ払えばいいと言うことになり、残りは店に返した。もしあの臭い焼酎をいやいやながらも持ち帰ったとすると、旅の印象が大分違ったかもしれない。たかが焼酎の臭いと言われるかもしれないが、大きい期待が外れて裏切られるとがっくりするものである。

  ここで分かったことは、やっぱり中国で作られた日本の焼酎は中国の酒の臭いがして臭いということである。一つ勉強になった。

○ やっぱり警官でも禁煙車の中でタバコを吸う。
  長距離の夜行寝台車に乗って、カシュガルからトルファンまで行った。私はタバコの煙が嫌いだから、禁煙が守られているかどうか、チョッと気になったが、最近はローカル列車でもなければ、禁煙が守られているようである。しかし、中には気が付かない振りをしてタバコを吸うのが稀にはいる。そんなとき、私としてはタバコを吸ってもらいたくないから、何か言いいたくなる。中国語が下手ではあるけれども、何とか自分の意志を伝えたい。そこで禁煙の標示がある場合は、あれが目に入らぬかとばかりに標示を指差しながら、ここは禁煙だと言ったりもする。つまり自分の言っていることの根拠がはっきり分かるように、一応は考えた方法なのである。

  それで、今回の長距離列車の食堂車の中のことであるが、サンセットだったかサンライズであったか、禿山のてっぺんに太陽が当たる様を、ビールを飲みながらぼんやりと見ていたら、警乗の警官が私の前の席に座ってタバコを吸い出した。ここは禁煙ではなかったのかと、回りを見回すとドアの上にチャンと禁煙と書いてあるではないか。そこで警官に、あそこに表示があるが、ここでタバコを吸ってもいいのかと聞いてみた。するとその警官は、隣の仲間の警官達が居る席に移っていってしまったが、相変わらずタバコは吸いつづけたままだった。人が少ないときは、吸ってもいいんだと言っているようにも聞こえたが、禁煙でもタバコを吸えるのはやっぱり警官だからなんだろう。警官が何も反論しなかったのは私が外国人らしい上に、老人であったせいかもしれない。警官が禁煙席でタバコを吸っていたのでは、禁煙の徹底が出来ないのではと思ったが、禁煙などのつまらなことを取り締まるのは、警官の仕事ではなくて車掌の仕事なのかもしれない。