女子社員のアパートへ行ってカレーライスを作る(10月13日)

  このタイトルを見ると、家人が心配するかもしれない。いい年をして中国で何をしているんだろうなんて。しかしその女子社員と微妙な関係が生まれる可能性なんて殆んど無いのである。女子社員とは中国人の社員である。会社には日本人は私しかいないのだから。実際には北京に独身者用アパートなんて無い。だから女子社員が独りで住むアパートに行くなんて状況は無い。普通、地方から出てきた独身者は普通の住宅、つまり単身者用ではない住宅を借りて数人で住む。そうでもしないと家が大きすぎて、家賃も高いからである。しかし若い女の子が住む所だから、こぎれいにしてあって、ピンクのカーテンが掛かっていて、テレビの上には可愛い人形が置いてあるとか。いやいや、それがそうではないのである。やっぱりここは中国と言うか、日本とは違うのである。結構凄いところに住んでいた。ちなみに中国には、鑑賞することを目的とする可愛い人形の文化は無いみたいである(泥人形はあるが)。

  それより何で女子社員の家に行ってカレーライスを作ったかと言うと、女子社員にカレーライスのルウをあげたが、作り方がよくわからないので、私が行って自らつくることになったのである。私がいる会社は日本向けの仕事をやっているから、女子社員ではなくても日本のことには関心がある。だから日本の代表的な食べ物として、カレーライスをあげた。実は日本から持って来たカレーライスの賞味期限が、切れかかっていたという理由もあった。

  あげるときに、作り方は箱の後に書いてある(彼女は日本語が読める)から、その通りに作ればできると言ったのだが、見たことも、食べたことも、ないものを説明書だけで作るのはやはり難しいらしい。水加減などは一応書いてあるが、煮込み過ぎれば、水が蒸発してしまって、焦げ付いたりしてしまうに違いない。硬さはヨーグルトくらいにすればいい、なんて言ったのだけれど、いろいろと話しているうちにカレーパーティーでもやろうと言うことになって、私が作らされる羽目になってしまった。私が常々日本男子は料理をあまり作らないが、私は出来るんだなどと、言っていたせいでもある。

  日本で働いたことのある女性が二人、日本へ行ったことのない女子社員が二人、合計四人の女性に囲まれて料理の腕を披露することになった。いや実際には私を囲むほどのスペースはないので、囲まれたわけではない。そうして料理の道具であるが、在ったのは中華包丁と中華鍋だけ。まな板はあった。これは中国式切り株のまな板ではなかった。皆さんは中華包丁でジャガイモの皮を剥けないのはご存知だろうか。包丁の幅が広すぎて親指でジャガイモの皮を押さえられないのである。その上、包丁が切れない。多分、中華包丁ってのは叩き切る為の道具だろうから、これはこれでいいのだろうけれど、日本の包丁のように、引けばすっと切れるのとは訳が違う。それで皮むきは、何かの専用の道具を使って、女の子が手伝ってくれた。肉と野菜は私が中華包丁で叩き切った。

 それから、冷たいビールを飲みながら、中華鍋一つで材料を炒め、水を加えて煮込み、更にカレールウを割り入れて、カレーライスを一箱八皿分作った。何故ビールを飲みながらかと言うと、日ごろから料理を作るときはビールを飲みながら作るんだと言っていたので、ビールを用意してくれたらしい。

  それから皆で楽しいカレーパーティー。と言っても場所はちょっと広めの玄関の土間のような所でのパーティーである。中国の家は玄関が無く、入るといきなり部屋になっていて、下はコンクリートのたたきのままであるから、特別の状態ではないのだけれど、日本の家屋を基準に考えると、玄関でパーティーをしているような感じである。椅子も5つは無いので、箱に座ったりして、出来合いの冷菜と飲み物で、カレーが煮込まれるのを待ちながら、パーティーを開始。

  それで味の評判であるが、ビールの酔いが回った中での評判であるけれども、全員が美味しいと言ってくれた。特に日本に行ったことのある社員で、自分でもカレーライスを作ったことのある女の子は、カレーは美味しくないと言っていたけれど、カレーの味を見直したらしい。作り方が違っていたと言っていた。簡単な料理であるが、水や材料の量が適当でなければやっぱり変な物になってしまうだろう。日本人ならばカラーライスはこんなものと言うイメージがあるから、それに近づけることは簡単なことなのだが。

  残ったカレーは、別の独身者アパート(独身者アパートは北京に無いのであるが)に3,4人で住む所に持って行って食べたらしい。その一人に味を聞いてみたのだけれど、美味しかったと言っていた。

  そんな訳で女子社員の住むアパート(?)へ行って来たのであるが、やっぱり日本の女の子が住む所とはチョト違っていて、いやかなり違っていた。折角招待されて行った部屋についてこんなことを書くのもなんだけれど、エレベーターの無い6階まで登った所に部屋があって、階段は電気が無くて真っ暗なところもある。階段の踊り場には乱雑な何かが置いてある。そしてドアを開けて入るといきなり食堂のような場所。冷蔵庫があって、電気釜が二つ直接土間に置いてある。更に部屋が二つあって一人一部屋づつ使っているらしい。この一人づつと言うのは大学を卒業して社会人になったからこそ実現したことであって、大学生ならば、寮の一部屋にニ段ベットで4人とか6人で住まなければならない。

  普通女性のベットルームまではなかなか入れて貰えないものだと思うが、狭いところでパーティーをやるものだから、勢いベットルームに入らざるをえない。ベットに座って女子社員とお話することになる。家具は殆んど無い。どうりで彼女達は部屋を簡単に引越しできるわけだ。床は全部コンクリートのたたきのまま。排気口は油煙で真っ黒。燃料はプロパンガス。ガスボンベは六階まで、足で運び上げてもらったのだと思う。更にトイレについては・・・、いや汚かったわけではない。中国のトイレってのは紙を流してはいけなくて、籠に捨てるんだけれども。この先は書かずに置こう。しかしビールを飲みすぎたのでトイレに行かない訳にはいかなかった。

  多分この部屋が特別であったと言うわけではないだろう。地方から出てきて、北京に住んでいる男性社員も女性社員も、このような部屋に住んでいるようである。

  最後に。どうかこのホームページのアドレスが会社の社員にばれませんように。そうでないと、再び楽しい女子社員のカレーパーティに参加できなくなってしまう。