変わる北京の四合院(9月8日)

  つい最近、故宮と貴賓飯店(王府井)の間にある南北の道、南池子のあたりが変わって奇麗になりました。どんな風に変わったかと言うと、今まで古くて汚かった建物を取り壊して、伝統的な四合院の建物を作り直して、北京の四合院の保護地区としました。新しい四合院は103個も出来たそうです。古くからの価値の建物が31箇所、大きい木も64本が元のまま残されているそうです。その上、南池子の道の両側にある並木もそのまま残されています。この並木道は以前から結構風情があったところです。そんな訳で、北京に来られる人は、王府井や故宮にも近い南池子のあたりを、散策されるといいかもしれません。

  新しく出来た建物の表通り側は、青レンガで出来ているそうです。この青レンガは実は黒っぽい色で、私には青くは見えないんですが、これをこちらでは青レンガといいます。これは古い建築にたくさん使われていて、硬そうでなかなか趣がある色なので、このレンガは表面を塗らずに、地のままで使います。一方現在建築に使われている茶色のレンガは、あまり奇麗な色ではありませんから、ここでは表面を塗って使っています。四合院の屋根の瓦も伝統的な灰色です。そして二階建てだそうです。

  しかしチョッと問題なのはこの建物が二階建てだということです。本来北京辺りでは二階建ての建物は少なかったのではないかと思うのですが。北京の伝統的建物は平屋であって、二階建ての建物はもっと南の方のものじゃないかと思います。琉璃チャンなどの一部に、確かに二階建ての建物がありますが、あれは新しい建物であって、以前の北京に二階建ての四合院など多くなかったのではと思うのですが。それで、二階建ての四合院は北京の伝統を再現したと言えるのかどうか、素人ながらチョッと疑問を持ちました

  推測ですが、何故二階建てにしたかと言うと、元からここに居た人を、ここに住まわせる為に二階建てにしたのではないかと思います。そうしないと多くの人を住まわせる事ができないからでしょう。驚くことに、元々ここには1076戸の住民が住んでいたとのことです。建物を二階建てにしたのですが、入居できるのはたった300戸だとのことで、他の住民は結果的に追い出されたことになります。この数字から見ると一つの四合院に、平均3戸が入るようです。

  話はそれますが、取り壊される前の南池子の、一戸の平均面積はたったの27平方メートルだったとか。建物の92%は危険な建物であって、設備は古く、最も問題なのは、基本的に必要な設備が無かったことです。例えばトイレは住宅内に無く、地区内にたった5個所の公共トイレがあっただけで、トイレに行くのに100Mくらいは行かなければならなかったそうです。暖房と言えば練炭でした。

  新しくなった四合院は、一気に新しい設備が取り入れられて、住民はIDカードで出入りるするようです。一戸あたりの平均面積は69平方メートル(それでもまだ狭い)で、一階にトイレ、暖房などの設備もチャンとあり、二階が寝室だそうです。家の外観と高さなどは、伝統的な景観を保つために制限がありますが、住宅の中の制限は無いそうです。

  この事業は"歴史名城保護工作"と言うプロジェクトによって、改造が進められています。南池子は地区毎に保護区とする第1番目のプロジェクトらしいです。これからもあちこちの四合院を文化保護区にするようです。しかし保護すると言っても、本来庭があった四合院の庭は不法建築で埋め尽くされていて、見るも無残なありさまになっていますから、住民を追い出して、大部分は一旦取り壊しでもしない限り、保護区らしい保護区は出来ないようです。そして北京には、四合院という優雅な名前を持ちながら、実は貧民窟に近いような平房(平屋)が、まだまだ沢山あるということです。

  話はまた別になりますが、新たしく保護区となったこの地区の家の周りは、奇麗に保たれるのでしょうか。確かに四合院の外は専門の掃除人がいますから奇麗になるでしょう(もし専門の人がいなければ無残な事になるのでは)。しかし四合院の中はどうなんでしょう。以前の四合院の中は目を覆うばかりの乱雑さだったので、人事ながら心配です。私の住んでいる集合住宅の階段は、SARSの時はガラクタが無くなりましたが、最近また増えだしました。またゴミの分別も始まりましたが、たった三種類の分別でも出来ないようで、こちらの人は漢字が読めないのではないのではないでしょうか(冗談ですが)。人の癖はなかなか直らないのではないかと思います。

  話が逸れてしまいましたが、新しくなった四合院の外側は、確かに奇麗ですので、秋の散策などの折には、是非ここを尋ねてみてください。

  しかし、よく考えてみると奇麗になった"胡同"(北京の路地のこと)より、雑然とした胡同のほうが好きな人が、きっといると思うのですが。北京のお土産用に、胡同を描いた油絵を売っているのですが、この画に描かれている四合院は、門などには汚い紙が張ってあったり、壁が禿げていたり、門の下の木が溶けるように無くなっている様を、わざわざ描いてあるのがあります。ああ言うのが四合院や胡同を表す、本当の風情と言うのかもしれません。やっぱり、雑然とした胡同のほうが好きだなんて人がいるようです。