食べ物の話あれこれ(8月02日)

○日本の食べ物は体に良いという話
  北京にも日本料理屋が進出している。100軒くらい有るのではなかろうか。これは主に日本人の駐在員とか、商談用なのかもしれない。一方中国人向けにも吉野家と日本式ラーメン屋が進出している。私もやはり日本人なので、日本の味を求めて食べにい行ってみた。美味しかったが、宣伝の方法に特徴があるのに気がついた。それは日本の料理は体に良いという宣伝方法である。

  吉野屋の方は、牛どんとセットになっている味噌汁が、体に良いというものである。日本人の長生きの原因の一つは、味噌汁を飲むのがその原因だと書かれていた。一方、日本資本のラーメン屋で"面愛面"と言うチェーン店があるのだが、この店は日本風とんこつラーメンが売り物の店である。ここのパンフレットによれば、とんこつベースのスープの中に含まれている、コラーゲンが老化防止にいいのだとか。

  中国でのこのような宣伝方法を見ると、日本は長寿国として知られているのだということが分かる。それと中国における牛どんとか、日本風ラーメンは決して安いものではない。そこらの中国ラーメン(本場のラーメンは美味くない)と比べると2,3倍はする。それを売り込むためには、体にいいと言う言い方、健康志向の食品と言うのが、宣伝として効果があるのかもしれない。体にいいことが好きな中国人にとって、体にいいと宣伝の仕方は、日本人に対するより効果があるのかもしれない。

  ところで吉野屋の味噌汁はあまり美味くないのである。味が薄くて頼りない。だから吉野家では、味噌汁とサラダのセット(20元くらい)を勧められるが、頑として、牛どんだけ(10元くらいで150円くらい)を注文する。吉野家の味噌汁が美味しくない理由は多分、次のような理由だと思うので、次はその理由について。

○ 吉野家の味噌汁が美味しくない訳
  吉野家の味噌汁が美味しくないのは薄すぎて、味が無いからである。何故薄いかと言うと多分中国人の口に合わせてあるのだと思う。中国の食事の習慣からみると、どうも薄いスープのほうが好きらしい。我々日本人が食べる機会がある中国料理は、宴会料理であって家庭料理と違う。宴会料理と家庭料理の違いの一つは、家庭料理では、いろいろな種類の主食を一緒に食べることと、もう一つは味のない薄いスープを飲むことである。

  宴会料理のスープはそうでもないと思うが、家庭で飲むスープは、塩味も出汁も効いていない雑穀で作ってスープなどが多いようである。薄いお粥のようなものがスープらしい。小豆を使った甘くないお汁粉のようスープもある。これとは別に卵とトマトで作ったスープらしいスープもあるが、これも味は薄い。そう言えば宴会料理のスープでも全く塩味の無いスープがあった。それは北京ダックで有名な全シュウ徳のダックのスープで、全く塩味が無く、それこそお粥のような味だった。やっぱりスープは少しは塩味が効いていた方が良い。

  ここで疑問を感じたのであるが、雑穀で作ってスープはこれはスープなんだろうか、それとも主食の一種なのだろうか。そこで周囲の中国人に聞いてみた。あれはスープなのか主食の一種なのかと。そうすると、あれは主食であると言う人がいた。そうであるとするならば、主食としてご飯を食べ、同時にマントウも食べ、更にお粥も飲むと言う事になる。そんなに主食ばかり食べるのかと言うと、実はあれはスープの一種だと言う人もいた。この点については何だか結論が出ないみたいである。しかしどうも薄いお粥のようなものをスープとして飲む人もいるらしい。多分そのせいであるのだろうが、スープらしいスープも味がとても薄い。このようなものを飲んでいるとすると、やはり日本の式の味噌汁では味が濃すぎるのかもしれない。とにかく形態も味も中途半端なスープ(?)が家庭で飲まれているので、それに合わせて、吉野家の味噌汁は不味い味噌汁になった、と言うのが私の推論である。

○北京あたりで人気の無い野菜は
  北京あたりで、ちゃんとした野菜ではないと言う意味で、人気の無い野菜はキャベツではないかと思う。会社の中国人に聞いてみたところ、全員(たまたま東北地方の出身者ばかり)がキャベツは嫌いとの事であった。それに何故かレストランでキャベツを使った料理を見たことも、食べた事も無い。会社の食堂でもキャベツは出たことが無い。中国では回鍋肉にキャベツを使わないで白菜を使う。高級広州料理の店に行ったら、珍しく千切りのキャベツに、マヨネーズだったか何かのソースかをかけたものが出てきたが、中国人はこんな料理を食べたことが無いと言っていた。あまり美味しくないと言う意味で言ったのかもしれない。何しろ生野菜を切っただけの料理なのだから。この料理は新しい西洋風のもの、もしかしたら日本風の食べ物として出てきたのかもしれない。

  私はキャベツが好きなので、買ってきて生のキャベツを食べるが、八百屋ではチャンと売っている。しかし中国人がキャベツの千切りなど嫌いなのは分る。中国人はあまり生物は好きではないようで、トマトやキュウリも炒めてしまうくらいだから。しかしアモイにいた人の話だと、キャベツを焼き飯の中にも入れると言うから、地方によっては違うらしい。これを食べた人の話では、やはりこの組み合わせでは、焼き飯が甘い感じがして、美味くないとのことであった。

○中国語でキャベツの名前は
  キャベツと言えば、キャベツは中国語で大頭菜だとばかり思っていた。大きな頭のような野菜と言う意味で、直ぐこの言葉を覚えた。以前東北地方に住んでいて、そこでは確かに大頭菜と言っていた。ある日、カラオケの女の子に、大頭菜を生で食べる、と言ったところ、あんな硬いものを生で食べるのかとビックリしていた。本当かと聞くので、いささか得意げに、力をいれて本当だと答えた。中国人は生ものをあまり食べないが、日本人は生ものが好きで、野菜でも卵でも魚でも生で食べるんだと言い切ったのだった。私はその女の子が、"生"で食べると言うところに疑念を感じたと思って、そう言ったのである。しかしあまりビックリしていたので、後日辞書を調べてみたら、北京あたりで言う大頭菜とは蕪のような根菜であるらしい。ザー菜の原料になる根菜かもしれない。キャベツは洋白菜とか丸い白菜とか巻いている菜と言うらしい。日本人は変なものを食べる人種だと誤解を与えたかも知れない。中国は広いから野菜の言い方にもいろいろある。そう言えばトマトの呼び方も東北地方とは違っていた。

○チャーハン
  チャーハンと言う語源は"炒飯"と言う言葉から来ているのだと思う。しかし北京でャーハンを食べてみる限り、このャーハンの語源が中国であるとはとても思えない。あまりにも美味しくないからある。中国と言っても上海とか広州とか広いので、断定などできないが、北京にいる限り美味しい物とは言えない。味は薄いし、卵は入っていないし、それならば肉が入っているかと言うとそれも入っていない。ただただ油だけはたっぷり使ってあるチャーハンで、味も薄く具も少ないのである。どうもこちらのチャーハンはちゃんとした料理ではないように思える。日本と違って人気が無い食べ物らしい。例え高級広州料理店で出てきたとしても、料理の最後にちょっと食べる主食のような役割しかない料理なのではなかろうか。

  どうしても焼き飯を北京で食べてみたいという人は、デパートなどの食堂に行くと、壁際に出店形式の店がずらっと並んでいる所がある。そこで揚州炒飯と書いてあるチャーハンを試してみるといいかもしれない。揚州炒飯は有名なので、普通のよりはいいような気もする。しかしやはり油はたっぷりだと思う。

  焼き飯の味を判断する時、日本の焼き飯を標準にして、美味いかどうかという考え方が、まずよくないのかもしれない。

○北京のヤム茶料理
  北京に来る日本人の中には、北京に行ったら、北京でおいしい飲茶料理を食べたいと思っている人がいるかもしれない。私も飲茶が好きなので、中国についてよく知らない頃だったら、北京で飲茶をと思っただろう。飲茶は油っぽくない、辛くない、中国特有の調味料が使われていない、えびシュウマイなどが美味い、などの理由で飲茶が好きなのである。しかし飲茶は本来北京のものではないから、北京で飲茶料理というのは、チョッと方向が違うのではないかと思う。

  勿論北京でヤム茶は食べられる。しかし、北京では飲茶を出す店が少ないし、食べ難い事も事実である。北京の中国人が日本人を招待するとき、飲茶料理などには連れて行かないのではと思う。どうも北京あたりの人は、日本人が飲茶、飲茶と騒ぐ程には、中国料理でありながら関心も知識も無いみたいである。飲茶をやっている店に行って、ヤムチャと発音しても通じないし、標準語で飲茶と言っても通じなかった。これはこの言葉が北京の言葉ではないからなのだろう。北京のレストランでは飲茶のことを点心というらしい。しかしこちらの人に点心と言えば、それはお菓子を指すと思われるかもしれない。

  あるレストランに行ったら、看板に早茶とか午茶、晩茶と書かれていたりしてこれが飲茶とはちょっと分からなかったりする。中には飲茶は昼しかやっていないなんてレストランもある。飲茶は軽い食事だから、本格的な食事である夜の食事には出さないのが、本式の飲茶料理なんだろうか。私は飲茶が好きなので、食べたいのだが、北京で食べるには、広州などよりずっと不便なのではないかと思う。しかし北京には飲茶を食べさせる店が捜せば結構ある。ホテル内の広州料理の店などに行けば、美味しい飲茶料理が食べられる。実は日本人を中国料理に連れて行く場合、中国的味付けの本場料理より、飲茶料理などの方がさっぱりしていて美味しいと言う人が結構居る。