新聞の三面記事から(7月27日)

○男幹部に女秘書を配することを禁止
  これは四川省の役所の幹部の"身辺工作員に関する規定"で、男の幹部は女の秘書を使ってはならないという新しい規定が出来たことが、四川省のあるマスコミによって流された。目的は"幹部と女秘書とあいまいな関係"とか、"生活作風"問題(生活態度の問題か?)や、腐敗行為を防止する為であると報道されて話題になった。これに対していろいろな意見も報道され、女秘書の禁止は性腐敗(と言うらしい)の防止に有効なのか、まさか幹部の過ちは女秘書が原因と言うわけではあるまい、これを禁止するからには、女性幹部に男秘書の禁止もしなければならないのではと。

  規定を作った側の意見も報道されていて、これは既に不文律として存在していたとか、秘書役は厳しい仕事だから、女性には不向きだからなどと書かれていた。しかしこの規定を作った目的は明らかであろう。なおこの規定は"身辺工作員"に関するものであって、幹部の身辺に女性に限らず、運転手や、訳の分らない連中を必要以上に配置することも禁止している。このような規定があることこそ、地方政府の幹部の中には必要以上に身辺工作員(女秘書も含めて)を侍らせて、権勢を誇る幹部がいることをうかがわせる規定である。私の個人的な感じ方であるが、中国語の"秘書"には特別な響きがあると思う。

伝染病
  中国の感染症で死亡率であったか、感染率だったかが、一番高いのが狂犬病、結核、乙型肝炎(B型肝炎か)などであるらしい。何れも日本では最近聞かない病気である。死亡率ではSARSが四位に入っていた。北京辺りではあまり気にならないが、地方に行く場合は狂犬病や結核には気をつけた方がいい様である。結核患者の数は忘れてしまったが、驚くほどの患者がいて、エイズの患者も100万とか120万とか言われている。都会は別として中国全体では、衛生とか医療とかに、かなりの問題があるようである。昨日の新聞によると、北京市では狂犬病の予防注射を受けさせるように、徹底するのだとか。現在では北京の犬は殆んど予防注射を受けていないらしい。しかし一番危ないのは、南の広東省の田舎の狂犬病であるようである。

○炭鉱事故
  河北省の少林寺が在る県だったかの地方の炭鉱で、出水事故があった。事故がおきてから10時間も連絡をしないでおいて、結局、炭鉱主、鉱長、安全管理者は逃げてしまった。その結果20名だかが閉じ込められて死亡してしまった。このような事故について、この日記にも既に二回も書いたが、今年も又同じ事故・事件が発生している。中国で起っている鉱山事故はとても多くて、事故による死者も毎年数百人になっていると思う。死者の数が多いのにもビックリするが、事故が起こると,隠すとか鉱山主が逃げるというケースがかなり多い。このような場合、違法な鉱山でありながら地方政府の"保護傘"の中で保護されていて、地方の役人とつるんでいる場合が多い。

○誘拐事件
  嫁さんにする為に、若い女の子が5000元から6000元位で買えるらしい。誘拐団18人が捕まって、女性42人が解放された。誘拐団というのは、身代金を要求するのではなくて、農村の嫁に売るのである。誘拐団は誘拐を商売としてやっているらしい。だから日本の誘拐事件とは違う。これとは別の事件で、SARS流行前に新聞で見たのであるが、事故を起こした車の中から、生まれて間もない女の子ばかりが、かばんに一人または二人づつ詰められていたのが、12人発見された。女の子ばかりと言うのは間引きされた子供にも思えるが、続報が見つからなかったので、目的、行き先などは分からなかった。日本でならば、大きな問題になると思うが、中国ではあまり大きな問題にはならなかったのだろうか。農家としては女の子より男の子が欲しいらしい。だから女の子を売ったのかもしれない。しかしそうすれば、嫁のなり手が少なくなってしまう。そう言った事情もあり、嫁に売る為の誘拐という商売が成り立つ。先の事件では42名もの女性が解放されたのであるが、問題は複雑で、誘拐された方も、実家の方が売られた先よりもっと貧しいとか、売られた先のほうが待遇がいいとか、中には既に子供までできてしまっている、などの理由により、本当に解放されたとは言い難い状況がある。

○ヤミ市場
  北京の中でもヤミの市場があるらしい。空き地を利用した野外の市場である。新聞記者がこっそり訪れて(暗訪して)みて書いた記事である。ここでは饅頭などを売っているが、埃が舞い立つ中、見るのも堪えがたいような所で饅頭を売っているのだとか、その饅頭売りから、何処の誰やら身分のハッキリしないおばさん三人が、ショバ代を集めている。このような野外のヤミ市場が成り立つのは、営業許可を持たない人でも、ここで野菜や饅頭を売ることができるのが利点なのだろう。このヤミ市場の奥では、"行医"と言われる医者が営業していた。

○行医
  "行医"というのは"流しの医者"と訳すと適当かもしれない。路地の奥の方でこっそりと医療行為をしている医者である。字の如くあっちこっちに移動して、医療行為をしている。勿論違法の医者であるが,この者を偽医者と言えるのかどうか。日本の場合、見たところ本当の医者のように見えるのが偽医者と言うものだろう。しかし"行医"と言うのはいかにも怪しげな場所で、怪しげな医療行為をしてるらしい。例の記者が試しに"行医"に診て貰うと、よく診もせず直ぐ治ると言って怪しげな、しかし安い薬をくれたのだとか。不法な医者といっても、流しの医者ではあるが看板(広告)もあるのである。不思議なのは、何故それが徹底的に取り締まれないのだろう。こう言った広告は私も時々見るのだが、中国には中国ならではの、"行医"を必要とする事情があるのかもしれない。

○ヤミの学校
  SARSが収束して、学校が再開された。小学校中学校は二ヶ月近くも閉鎖されていたらしい。それで小学生が学校に行こうとしたら、学校が無くなっていたのだとか。これは農村の話ではなく、北京の話である。実はこのような学校は正規の学校ではなくて、出稼ぎ者の為に私的に作った学校である。出稼ぎ者は北京戸籍が無い。北京戸籍が無くても暫住証と言うのを貰えば、あまり問題が無いらしいが、それも貰えないとなると、子供は学校にも行けないらしい。そこで需要が有るから、学校を作る人がいる。二ヶ月も学校を閉鎖している間に、校長も先生も学校を放り出してどこかへ言ってしまったらしい。金儲けの為だだったのだろうか。

○ ヤミの学校の閉鎖
  このような学校が取り締まりにあうこともあるらしい。ちょっと前の話であるが、旧正月の休み明けで、学校に行ったら学校が閉鎖になっていたのだとか。閉鎖したのは北京の教育局だったか(?)。学校としての条件が不備だと言うので閉鎖したらしいが、行き場の無い生徒が途方に暮れていた。しかし教育局に条件の悪い学区を閉鎖する権限は有っても、生徒をまっとうな学校で教育を受けさせと言う義務は無いらしい。もちろん北京市民の師弟に対して、こんな扱いをしたら、中国と言えども大変な事になると思う。しかし出稼ぎ労働者の子供は、市民とは認められない者の子供だから、黙っているしかない。私の家の近くにも出稼ぎ労働者用の私立の小学校らしいものがある。そのうち写真を撮りに行くつもりだが、運動場も無い貧弱な小学校である。中国の教育事情は二重の構造になっている。

○北京の飼い犬条例
  北京の飼い犬条例が変更になるらしい。珍しいことにはこの条例を作るのに、広く意見を求めたらしい。条例とか法令を作るのに、広く意見を求めるのは中国では極めて珍しいことで、今後は、条例を作るのに、一般市民の声が反映できるようにする前兆なのであろうか。しかし、一般市民の声を反映すると言っても、飼い犬の条例だけではまだまだ西洋並、あるいは香港台湾並までにはほど遠いようである。ちなみに今までの飼い犬条例では、初年度の登録料が、市中心部で5000元(給料の3,4倍か)もして、人間様並みに戸籍(登録)が必要だった。これは明らかに罰則的登録料であった。従って今飼われている犬はヤミ戸籍の犬が大部分だとか。この金額が2000元くらいになるらしいのだが、それにしても高い。

○結婚証が必要無くなった
  江蘇省の法律が改正になって、結婚証が無くても、同じ屋根の下に住めるようになったのだとか。これが話題になったのは、どこの省でも家を借りて済むとか、ホテル泊る場合で男女が一緒に泊る場合は、結婚証の提示が必要という条例があるからである。江蘇省だけが先駆けてこの制限を無くしたと言っても、外から来る人が江蘇省に来て住む場合に不要になったと言うだけで、ホテルに泊るには必要らしい。続きの記事によると、北京では依然として結婚証が必要で、変更する予定は無いとのことであった。中国はこのような場合結構厳しいのである。しかし実態はかなり大雑把なようで、中国人のツアーに参加して旅行に行ったが、結婚証の提示など求められていない様であった。ちなみに外国人に対しては、こんな要求をされない。我々から見れば当然のことなのだが、これを外国人が優遇されていると言っていいのかどうか。中国人から見れば、外国人だけが自由恋愛を謳歌しても良く、中国人は駄目と言うことになっている。

○法務官に対する規制
  法務官にたいする規則が出来たとの記事が載っていた。これは北京での話だったかもしれない。法務官とは裁判官や検事なのだろうが、禁止事項が書かれていて、その内容が結構細かい。例えば、退勤後レストランやカラオケの店の前に公用車を止めて置くなというのがあった。また法務官が事件の当事者に対して、弁護士などの紹介をするな、というのも有った。中国の裁判官は日本の裁判官と違って、法廷外でも証拠集めや仲裁などを積極的にする制度らしいのだが、このような細かい規則を見ていると、やっぱり中国の法務官はこう言うことをやって、裏には何か有るのかと思わせるような規則である。規則が細かいのも、ここまで具体的に書かないと駄目なのかなどと思ってしまう。そう言えば北京の地下鉄の中に書かれている注意事項も細かくて、乗客に対しては礼儀正しくするようにとか、従業員に対しては職業を敬えなんてのもあった。とにかく中国では注意事項が多くて、あれをするなこれをするなと細かい。