中国の対日政策は変るのか(7月17日)
(ちょっとテーマが重すぎるかも)

  先週(7月10日くらいの週)、日本の共同通信のニュースをインターネットで見ていたら、中国の新聞社の編集委員とか大学の教授とかが、対日政策を変更した方がいいと言った内容の論文を発表したと、書かれていた。こう言った論文は去年の暮れから書かれていて、議論になっていたのだとか。中国の指導者が交代すると発表された以降のことであるから、指導者の交代とこの論文の発表は関係があるのかもない。指導者の交代によって、対日政策が変わるのかもしれないという予測である。変わるとすれば、その方向は友好的なほうに変わるのではないかと思う。

  実は対日政策が変わるのではないかと思わせるようなドラマが放映された。それは北京のSARS騒ぎの前かさなかの、「共和国」という連続テレビドラマであった。実を言うと、テレビドラマの題もはっきり覚えていなくて、「共和政府」だったか「共和政府の成立」だったかは、はっきり覚えていない。おまけにドラマの中の中国語もよく聞き取れなくて、正確な内容はこうだと断定はできないが、それは今までに見たことの無いドラマだったのは確かである。

  時代は清朝末から中華民国共和国ができるまでの頃で、司馬遼太郎さん描くところの「翔ぶが如く」とか「坂の上の雲」と同じ時代の中国の話である。その中には日本との関係が出てくる。NHKの大河ドラマのような大掛かりなドラマである。そのころ清朝には西太后や李コウショウ(字が思い出せない)とかがいて、一方の明治政府には明治天皇がいて、重臣達もいた。両方の政府は外国の列強と対峙しており、お互いに争っていた時期である。その頃の中国の新しい共和国政府が出来るまでのドラマである。話は日本と清朝が日清戦争を始める前から始まり、中国が負けたところも出てきた。日本の国内事情も頻繁に出てきた。

  そのドラマの中で、日本側の明治天皇や重臣達、日本の庶民も登場するのだが、今までには考えられないほど、日本側に好意的に描かれていていた。例えば明治天皇の描き方であるが、まことにりりしく、民のことを思いやり、戦費を捻出する為には、一汁一菜に甘んじるとか、指導者として国民を啓蒙するふさわしい指導者、これぞ帝王の鏡といったようなシナリオだった。方や清朝側では、戦費を流用してしまったりで、日本とは対照的に、清朝政府は末期でもあり愚かしい様子に描かれていた。

  明治天皇が戦費捻出のためにある時期一汁一菜であったか、それが本当の事なのかどうかは知らない。もしかしてエピソードを利用して、誇張までして日本側の立派さを描いたのかもしれない。誇張があるかどうか知らないが、日本を好意的に描いたと言う点では、大変な変わり様である。明治時代の時期、中国と日本とを比較すると、日本の指導者は立派であって、日本は上手く近代国家になり得た。しかしそれが確かな事であっても、そんな事はドラマにならなかったのが中国である。殆どが日本人とか日本兵は悪役として登場した。

  今まで中国から見ての日本というと、特にドラマでは日本兵が昔の西部劇のインデアンのようにバッタバッタと撃たれて倒れるようなものとか、悪徳日本人が登場するものとかで、日本人はいつも悪役であった。この傾向は1995年頃が特に酷かった。私はSARSで一時期日本に戻っていたが、その時、北朝鮮のドラマが紹介されていた。そこではやはり凶悪な日本兵や日本の悪徳役人などが登場していたが、中国のドラマもあれと同じようなある種の教育宣伝映画であった。

  日本が中国や朝鮮を侵略したことが事実あって、その事が重要なドラマのテーマになるのはありえるとしても、このようなドラマを繰り返し繰り返し放映するとするとすれば、何かの目的を持った政治的宣伝と言わざるを得ない。こう言ったドラマは中国のドラマにしても、朝鮮のドラマにしても反日ドラマといっていいだろう。

  1995年は確か新中国成立何周年かにあたり、共産党を称える為に、こんなドラマを連日放映していた。本当に連日の放映であった。これは国がこれまでになれたのは誰のお陰か(共産党のお蔭だと言いたい)を知らしらしめて、国民を一致団結団結させる為の政治的キャンペーン、プロパガンダであった。天安門事件以降の思想引き締めのための手段として、危機感を煽るつもりで反日ドラマを放映したのだろう。同時に共産党が無ければ、新中国は無かったという歌が流されていた。有り難い共産党と言うことにしておかなければ、再び天安門事件が起きるかもしれないといった、恐れがあったのだろう。その頃大学に入りたての大学生は、ずっと軍事教練を受けていた。

  ところが今回のドラマを見て、日本や日本の指導者をこんなに好意的に描いたドラマは今まで見たことがなかったのでちょっとビックリした。ドラマの主旨は、日本の指導者も立派だった、庶民も一致団結して事に当たった、だから上手い具合に近代国家が成立できた。これに対して中国側には大いに問題があった。これは歴史の教訓にもなる、と言うメッセージのように思えた(ところでこのドラマの作者は司馬遼太郎さんの本を参考にしたのではないかとも思えたのだが、どうだろう)。

  最近のドラマを見て、上に書いたような感想を書いたが、中国の日本に対する考え方が変わって来るのだろうか。これからの中国は、歴史の一部をやたらに政治的宣伝に利用しないとか、歴史を冷静に見るとかなどの方向に変わって行く前兆なのだろうか。そのようにも見えるが、日本人としては変わってほしいものである。中国で反日ドラマなど見たくはない。事実を見たくはないと言うことではなくて、中国の政治的宣伝などを見たくはないと言う意味である。