今、北京のSARS騒動から逃れて日本に居て暇なので、前からチョッと怪しいと思っていた、中国発表のSARS患者数を、過去に遡って詳細に調べてみた。数字を見ると頭が痛くなる人は、読み飛ばしてください。
北京のSARS擬似患者についてであるが、これが日本で言うSARSの疑い例と同じであるかどうかは分からない。しかしそれに近いものだろう。そしてその擬似患者の発生累計は少なくとも6月10日現在まで2840名である。しかしそのSARS擬似患者のうち約25%(694人)だけが本当のSARS患者と判定され、他の2489人は実はSARSの患者ではなかったと言うのである。それは本当なんだろうか。どうも疑わしい。この2489人のうち現在は1795名だけがSARSではないと判定されているが、残りの人も恐らくSARSではないと判定されるはずである。
上のグラフをクリックして見ていただきたい。5月以降のSARS擬似患者がSARSの本当の患者にならずに減少したことが分かる。
SARS擬似患者数は本当のSARS患者とほぼ同数、同時期に増えてきたのである。そして今は本当の患者が発生しなくなると共に、擬似患者も発生しなくなった。SARS擬似患者の発生は、SARSの本当の患者の発生と関連があるのである。しかし多くの擬似患者はSARSではなかった。SARSが流行しているときに限って、SARSではない肺炎または、弱いSARS(?)の患者が2500名も発病していたことになるが、これは疫学的に有り得ることなのだろうか。
それとも5月初め頃と現在とは、SARS擬似患者の診断基準が変わったのだろうか。以前はこの病気を恐れるあまり、普通の感冒の患者まで収容してしまっていたのだろうか。それが今は落ち着いて冷静な判断基準で判定していると言うなら、一応理屈が付く。しかしそうであるとすると、これも恐ろしいことである。
話は別だが、人民日報に次のような漢詩が載っていた。
SARS 何れの時にきわまる
患者 多少か知らん
小楼 昨夜も又封ぜらる
首都は回首するに堪えず 月明の中
糧油(穀物や油)蛋菜(卵や野菜)なお在るも
只だ是れよく買えず
君に問う よく幾多の愁いありやと
最も怕(おそ)る SARSの疑いで拘留されんことを
この漢詩は李Uの漢詩「虞美人」のパロディーだそうである。パロディーではあるが、実際にも医学的根拠がないにもかかわらず拘留してしまったことがあったのだろうか。ありそうでもある。例えば、家族に患者が出たと言う理由で、肺炎でなくてもSARS擬似患者とさてしまったとか。SARS擬似患者の判定基準に付いて聞いてみたいものである。
数字を見ているといろいろと疑問がわいてくる。しかし多分中国ではこういったことは公表されないに違いない。中国はやはり謎の多い国である。最近の報道でもWHOの報道官は、「どのように感染者を数えているのか、WHOとして情報を求めている」と疑問を投げかけた。また「SARSに関しては、中国には信頼性の問題がある。数字の減少が唐突だ」とも述べたと報じられている。
数字についてであるが
6月10日までのSARS擬似患者の累計は2840名(内訳:4月末のSARS擬似患者が1408名+その後6月10日迄の発生が1432名)。但し4月30日以前にSARSではなかったとして排除された人は累計に含まれて居ないから、SARS擬似累計数はもっと多いはずである。
SARS擬似患者累計2840名の判定(本当のSARS患者と判定された人694名+SARSではなかった人1795名+6月10日現在まだ擬似患者である人351名)。この現擬似患者351名は最近の判定実績から見ると、大部分がSARSではなかったと判定されるはずである。
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