中国では地面に住所が無い(4月3日)

  日本では土地に名前と番地が付いて、それが住所とされているから、中国の住所も同じかと思ったらそうではないらしい。中国の土地には番号も地番も無いらしい。勿論、市や町の名前は、土地に付けられた名前である。もっと細かく区分した、区とか、村、鎮なども土地に付けられた名前である。更に細かい単位の、小区とか○○寺(これはお寺の名前でもあり、地区の名前でもある)なども、確かに土地に付けられた名前である。このように土地に付けられた名前には、境界がある。しかしその先のもっと細かく細分した土地の名前は無いらしい。つまり地面には住所が無いらしい。

  中国の住所の表し方に、建国門外大街1号などと言う表示があって、これをみると地面、土地に名前があるように見えるが、これは実は建物の番号であって、土地の番号ではない。それに建国門外大街と言う名前も地面の名前ではない様で、通りに付けた名前らしい。もし土地に付けた名前なら、どこまでが建国門外大街なのか境界があるはずであるが、地図を見ても境界などは書かれていない。私の生まれた所は日本のある町の丸山町719番地であるが、丸山町と隣の町の境は地図でハッキリわかる。

  建国門外大街1号と言う表示は、多分建国門外大街に面した一番目の建物と言う意味で、土地の番号ではない。もしこの建物を壊して、建物が無くなったら、そこの住所は無くなってしまうらしい。住所はまさに住む所だから、住む人が居なければ、住所はなくてもいいのかもしれないが、日本では家が無くなっても住所はある。

  北京の路地の名前に、"胡同"というのがあるが、これも路地に付けられた名前であって、地面に付けた名前ではない。この路地の名前を住所として使い、その路地に門を向けている家が、その"胡同"の何号と言うことになるらしい。もし小さな路地に名前が無かったら、住所が無いことになるのではないだろうか。そう言えば、北京にはたくさんの"胡同"に名前が付いていて、その数は何千とか、本に誇らしく書かれていたりするが、これは、地面に名前が無いから、やむを得ず、"胡同"に名前を付けたという側面も有るのではないだろうか。日本ならば路地に細かく名前を付けなくても、番地を持った地名が有るから、いちいち小さい路地まで名前を付ける必要はない。

  中国の家には表札もポストも無い。表札が無いから住所表示もない。(最近はポストを持つ家も出てきて、大きなビルには住所表示もあるが)。ポストや住所表示が無くても困らないようである。既にどこかで書いたが、郵便は属している単位(学校や職場)宛に送られるからである。私の住んでいる所宛の手紙は届いたことが無い。住所がハッキリ書かれていても、個人の家までは配達はしないのである。

  中国では土地は国のものだから、地面に番号をつけて管理する必要は無いのかもしれない。手紙を送るときも、"○○ビル前"くらいの表示でいいのだろう。実際にも地番が無いから、そのような表示の方がずっと分りやすい。会社の女の子に自分の家の住所について聞いてみたら、一人の女の子はお爺さんの代からの家で、家に付けた番号があると教えてくれた。その家は相当大きいらしい。何時の頃かその大きいうちを親戚で分割したらしい。分割しても家の番号は分割されていないようである。

  もう一人の女の子の家の住所は、王府井の近くの"東四"の"六条"と言っていた。どうもここでは家単位の細かい番号(すなわち住所であるが)は無いのだとか。日本の京都で言えば、京都の六条以下の細かい番地(正確には番地でなくて家の番号)は無いらしい。何故、細かい番地が無いのかこれも不思議である。もっと聞いてみたいのだが、私の下手な中国語と、彼女の下手な日本語とでは中々聞き出すのが難しい。

  それにしても"東四"以下の家の番号も無いのは何故なのか解せない。家を建てなおすとき、数軒を纏めて大きな家にするのであれば、番号を欠番にするだけで、他の家の番号を変える必要はない。しかし建て直して、家の数が増えるとなると、その家の番号はどうなるのだろうか。面倒だからいっそのこと違法建築の建物の番号など、無しにしてしまえなんてことなのだろうか。実際に。北京などでは、伝統的な四合院の建物でも、大抵は数家族に分割されてしまって、なおかつ中庭などは違法建築で埋め尽くされている。中国の混乱の時期に、おかしな場所におかしな建物を建ててしまった場合が多いようである。北京あたりでも見た目にもおかしな場所に家が建ている。ここで言う混乱の時期と言うのは、中国が常々宣伝している日本の侵略があった時期(この手の宣伝は以前よりはずっと少なくなったが)のことではなくて、毛沢東が指導した文化大革命の頃のことである。

  中国では、土地は国家の物であるとする共産主義の国であるから、
土地に地番が無いのは解るが、今の中国では土地の使用権が売買されるのだから、その使用権をどうやって明記するのだろう。