北京人になる方法
(8月15日)

  最近ある一人の社員がそわそわしてよく外出するので、聞いてみたところ、北京人になる手続きをしているのだとか。更に聞いてみると、私が勤めている会社に勤めていれば、北京人になる条件の一つを満たすことになるのだとか。私が勤めている会社は、"高新"と言われている会社で、高等新技術を持っている会社というお墨付きを、北京市から貰っている会社である。ただの"高新"だけでは駄目で、会社が北京の中心部にあることも重要らしい。そこへ勤めていて、大学の修士課程を卒業していると、北京人になれるらしい。学士さまでは駄目なのである。

  ここまで書いて気が付いたのであるが、私が勤めている会社の社員(中国人ばかリ)が、私のホームページを見る人がいるかもしれない。私がいる会社には日本語の出来る社員が結構いて、日本語が読めるのである。日本語が出来ることが売りの会社でもある。そうして私がホームページを持っていることを知っている人もいる。そうすると、この話しのネタは、"私が話したことだ"と直ぐ分かってしまう。このそわそわしていた人物は我が社の社員ならば誰でも分かると思うが"K"さんである。"K"さんご免ね。

  勝手に許してもらって"K"さんの話しを続けると、"K"さんはもう30歳の手前であるが、まだ結婚していない。これは中国では珍しいことで、30歳になるのに特別の理由もなく結婚しないのは"おかしい"と言われるのである。これは本当で、遠慮会釈なく中国では"おかしい"と言われる。

  北京人になるには別の方法もあって、私が勤めている会社(高新である)に、大学から新卒として直接入社した場合は、北京人になれるらしい。いずれにしても文化程度が高くなくては、北京人になる資格はない。中国の文化程度とは学歴のことである。つまりエリート(選良)でなくては北京人にはなれないのである。

  しかしその学歴であるが、中関村と言う秋葉原みたいな所に行くと、卒業証書が簡単に手に入るのだとか。新聞記者が、試に清華大学の○○科の卒業証書が欲しいと言ったところ、翌日には注文の品が出来てきたとか。

  話しが逸れてしまったが、その憧れの北京人になると何が有利か。独身者であるならば、結婚相手を捜すのに有利。ある種の住宅を安く買える優遇措置がある。ある会社は北京人ではないと就職できない。例えば最近北京のトヨタが社員を募集したが、トヨタに就職できるのは北京人だけである。これはトヨタ自身が決めたことなのか、北京市の圧力(指導とも言うが)あってのことか分からないが。

  そのほかにも、北京人でない人が携帯電話を買う時、北京人が保証人にならないと、買えないのだとか。他の人に聞いた話では、旅行に行った時、北京の身分証を示すとずっと信用があるのだとか。それは確かなことかもしれない。何しろ北京人になる人を選りすぐっているのだから。めったになれない北京人なので、結婚相手を探す場合、断然有利になるのはうなずける話しである。"K"さんはその有利な状態になりつつある。しかしまだ結婚しないのでおかしいと言われる状態にもなりつつある。

  また北京人の女性の子供は北京人になれるが、北京人の男性の子供だからと言って、北京人になれるわけではない。結婚相手が北京人でないと、子供は北京人になれない。その北京人である子供が大きくなると、大学に進学することになるが、北京人が北京の大学に入る場合、点数が甘くなっている。それに反して他の省の合格点は高くてなっていて、北京の大学に入るのがむずかしいのだとか。北京人は障壁によって守られている。不公平。

  我が社は北京の戸籍を持っていない社員の方がずっと多い。つまり地方から出てきている社員達が多いのである。住んでいる部屋は日本の公団アパートの様な一般用住宅で、同郷の友人数人と共同で借りて住んでいる。北京には独身用のアパートなどは無いから、大部分は友達と割り勘で部屋を借りて生活しているのである。

  北京の戸籍を持っていない人は、一月15元を払って登録して、暫住証を手に入れる。これが無いと北京から追い払われる。必ずしも追い払われる訳ではないが、当局の都合の悪い時には追い払われるのである。そのほかに2元のゴミ処理費も取られるのだとか。

  最近の新聞周刊というニュースの中で、現在の戸籍制度について書いてあったが、「戸籍制度の五大弊害」との題目で、やはり不公平と書いてあった。それによると現在の戸籍は計画経済の時代に作られたもので、都市の発展と農村の近代化を阻止している、戸籍管理によって中国国民の身分を分けている、農村戸籍と非農村戸籍(都市戸籍)、常住戸籍と暫住戸籍に分かれていて、戸籍が同じでなければ待遇も同じではないとも書かれていた。具体的には暫住証が必要であったり、管理費を取るのは正常ではないとも書いた。現在ではこのような意見を中国でも明らかにしても良い状況になったらしい。

  更に、大量に都市に入ってきて工業商業に携わる農民には、城市の市民と同じ機会も社会的地位も与えられてない。そして基本的人身安全感都没有(暫住証が無いと追い返される可能性があること)とも書かれていた。

  又、今の戸籍制度では有効に人口を管理することは出来ない、とも書いてあり、例えば2000年の人口調査では、峽西省では200万も少なく登録されていた。更に湖南省では一千万近くが少なかった。重慶市では13万の死亡者が戸籍から外されていなかった。そして中西部の農村地区では相当部分が戸籍が無い(黒口)現象もあったとか。ところで北京の人口とはどのあたりの人口を示すのであろうか。本物の北京人のことなのか、暫住証を持っている外地人を含めるのか、暫住証を持たないでヤミで住んでいる外地人も含めているのだろうか。前記の数字が本当のことであることを示す為に、ニュースの出所を書いておくと、2001年08月07日16:47 中国新新聞網である。

  前出の"K"さんの話しであるが、手続きは済んだがまだ北京市民にはなっていない。それなのにもう元の戸籍は無いのだとか。だから今は"黒口"(戸籍の無いヤミの状態)だと自分で言っていた。これではやはり戸籍によって人口の動態などを管理できないのではと思うのだが。ある人が農村戸籍から都市戸籍に移すことが出来たとすると、例え親と同居していても別の戸籍になる。勿論夫婦であっても、都市戸籍と農村戸籍の夫婦であると、別の戸籍になる。ちなみに北京市と言えども北京の周辺部は、殆どが農村戸籍である。日本の制度からすると、結婚していることを証明するのは戸籍のなのであるから、それが別でるとすると少しおかしなことになる。それで中国には結婚証という証明書が別にある。これが無いと中国ではホテルに一緒に泊まれないのだとか。