黄村鎮の団地の中
(3月22日)

  私が住んでいる団地は、黄村鎮棗園西里である。中国の他の例に漏れず、塀で囲まれている。歩いて調べところ、22棟の建物があった。

  一週間前から、何時も通っている門が突然閉ってしまった。脇の小さな門は開いているので、歩いて通る人には問題はないが、自動車は通れなくなった。何時も守衛所に居た、4、5人の制服の警官みたいな、守衛みたいな人がいなくなり、私服の若者だけの門番になった。それでもどこからか自動車は入ってくるので、歩いて調べた所、別に門があり、そこから自動車が入ってくるようになっていた。但しタクシーなどはお金を出さないと通さない仕組みになったらしい。

  その門では、タクシーで帰ってくる人と守衛が揉めていた。どうもこのような仕組みになったことを、ここの住民は知らないらしい。何人かが文句を言っていから、突然のことで、住民には何も知らせていないらしい。閉ってしまった方の門には、門を締めた理由についての何の通告もない。自動車用の門で警備に当てっている警備員は、締めてしまった方の門の警備はしないらしい。とするとあの警備員は自動車の通行料を徴収する為の警備員なのだろうか?  警備員と言っても団地内の巡回はしていないようである。団地の入口は二つであるが、回ってみると、塀が破れていたり、別の小さな入り口があったりで、関係ない人の侵入を完全に防いでいる訳ではない。とすると何の為の警備員なのだだろうか。警官ではないらしいが、公安のマークを付けている。公安であるからには、公の安全を守ると言う意味に思えるが、現状から推測すると、一部の車からの費用徴収係りの様である。

  いろいろと聞いてみたところ、この団地の管理を担当しているのは、管理会社がやっているとのことである。管理会社の担当は、団地内の清掃やゴミの回収、暖房の供給、有線テレビ、水道、電気、下水、ガス、他には団地内の警備もしているらしい。盗難に遭ったときの最初の連絡先は、この管理会社であるらしい。管理会社は自治会とは違うらしいが、自治会でないは管理会社が、団地を利用してお金を徴収していいものだろうか。私が居るところは棗園西里であるが、棗園東里では入り口を締めていない。タクシーで帰った場合、棗園西里だけが厄介なのである。中国の制度はなかなか分かりずらい。

  建物には"単元"と言う呼び方がある。団地の建物の一つの入り口と階段を共有する、一階から六階までの住宅、合計12戸が一単元に属する。私の住んで居るところは11号楼の1単元であるが、この単元のうち常時住んでいる家は、私のところを含めて3軒しかない。一単位の一階の家は幼稚園として利用されている。その外には週末だけに人が来る家がニ軒あるだけである。意外と住んでいる人が少ないのである。投資用に買ったのであろうか。この団地の入居率は3割程度の様である。住んでいる人が少ないと言っても、団地の住宅が売れな買ったと言うことではないらしい。売れるには売れたが住んでいないということらしい。しかし住んでいなくても管理費が高いのである。冬の暖房一年間の費用は、北京の人一人分月収と同じ位らしい。それにもかかわらず沢山の部屋が空いている。、暖房のパイプは六階から一階までの床を突抜けていて、家毎にバルブがあるわけではないから、留守の家でも暖房止めるわけにはいかない。それで空いている部屋でも、暖房費は前もって徴収される仕組みになっているらしい。

  このアパートの入居率は3分に1位に見える。これだけ入居率が低いのも謎である。団地内には自家用車らしきものが増えてきた。これからもっと増えてくると、駐車所の権利の問題(争い)が出てくるのではないだろうか。今のところ自動車は、勝手に置いてるらしい。

  それにしても窓が古くなって錆びてしまった家が多い。建ってから五年位前の建物であると思うが。窓が錆びてしまってアルミのサッシに取り替えた家がたくさんあった。元もとの窓の方式は鉄の引き戸であった。それをアルミの引き戸のに変えたのである。私の住んでいる家もそうであるが、開き戸が引き戸のになったのは、多分日本の文化の影響であると思う。中国の古い建物には引き戸は無かった。そして折角新しくしたアルミのサッシであるが、窓本来の機能であるスムースさや密閉度の点からは、かなり問題がある窓である。開けることさえままならない。たかがサッシであるが、これをキチンと作りつけることは、なかなか難しいことであるらしい。窓枠とガラスの間のパテも剥げ落ちてしまって、隙間だらけになっている。

  夜暗くなってから家に帰ると、ビルの入り口は、真っ暗な洞穴の様である。しかし一歩中に入ると、足音で電灯が点く仕掛けになっている。上に住む住人は、私の入り口の前でわざと大きな足音を立てる。それは私の部屋の前の電灯が、音に反応し難いからである。家に着いて部屋の中に入るのも面倒である。ドアがニ重になっているので、二つの鍵を使って開けるのだが、開けて中に入ると玄関がない。いきなり室内の床になるから、靴を脱ぎ捨てる訳にはいかない。靴の始末をしてからでないと扉を締められない。荷物が多い場合は結構まごまごする。出掛けるときもそうであるが靴や捨てるゴミを手に持って…・、脱ぎ捨てたスリッパも横に退けて、…・など、玄関がない為に面倒なことが多い。これからは中国でも日本の文化を取り入れて、玄関を設けるともっと便利になるのではないかと思う。
  
  住んでいる人が少ないせいか回りは以外と静かである。しかし夜明けになって、小鳥の声が全く聞こえないのは寂しいことである。スズメは居るには居るようだが、あまりスズメの声は聞こえない。昼間になると廃品回収の人の声が聞こえる。廃品はよく回収されている。例えばペットボトルなどを窓から放り投げておくと、誰かが拾って行く。勿論私はそんなことはしないが。ダンボール、ビール瓶なども同様であるが、このようなゴミは売れるらしので、外の放っておいても誰かが回収してくれる。困るのは回収されないゴミを散らかすことである。しかし団地内であれば、掃除人が掃除してくれる。問題なのは掃除の担当者がいないところで、回収の価値の無い、ビニールの切れ端などが捨てられることである。これは風に飛ばされて飛んでいくしかない。

  団地内の掃除は管理会社がしてくれる。階段で、ひまわりの種の滓を吐き出しながら歩いても、何も問題が無い。掃除する人が掃除してくれるらしい。しかしこのような制度は確かに便利ではあるのだが、この制度があることによって、親は子供にゴミを捨てない様に教育しないらしい。掃除をする人はあちこちで見かける。掃除してくれる人がいるのは、いいことであるが掃除してくれる人がいるので、捨てることに抵抗がないらしい。

  管理会社がいろいろやってくれるらしいのだが、郵便物や新聞の配達はしない。一応一階の入り口に郵便受けはあるが埃を被って、使われた様子はない。どこで郵便物を受け取るのだろうか?  牛乳の配達はある。これは大きな会社が盛んに宣伝をしていて、宅配の客を募集していた。

  団地の中には犬を飼っている人がとても多い。最近の流行であるらしい。家の中で飼うので、全て小型の犬で、狆みたいなのが多い。この犬が屋外で排出した糞はそのまま放置されている。もし道路に放置されていたら掃除をする人が始末する様である。しかし庭の中までは掃除しないのいで、暗闇では糞を踏んづけないように注意する必要がある。

  団地の中には、雑貨屋、洗濯屋、小さい八百屋もある。風呂屋もあった。風呂屋と言うよりシャワー屋といったほうがいいかもしれない。18元(260円位か)もして安くはない。医者もあったが、あまりお世話になりたくないような感じである。

  建物の外壁のタイルが剥げ落ちている。これではたまに怪我人が出るのではないだろうか。そのときの責任はどこにあるのか。事件の当事者にはなりたくはないが、知りたいことである。工事中の高速道路の歩道橋の淵石は、完成前なのに既に剥げ落ちていた。

  トイレの水が流れっぱなしになり、台所に水漏れも激しい。これを直してもらわなければならないが、そうすると工事人は、多分土足でどかどかと家の中に入ってきてしまう。中国では入り口で靴を脱ぐ習慣は最近のことなのであろうか。ガスのボンベの交換や、電話の点検の際にもそうであった。

  団地内のことは管理会社がやってくれるが、そんないにサービスがいい訳ではない。ガスの配管があってもガスは何故か来ていない。それで管理会社が関知しないプロパンガスを使わざるをえない。有線テレビは管理会社の管轄らしいが、既に三週間も見えないままである。配管の水漏れも管理会社が修理してくれるらしいが、どの程度にキチンと修理してくれるものやら。ガスボンベの交換では、パイプとの接続を手で閉るだけなので、ガスが漏れて臭った。

  工事の際に土足で入ってこられても、今の季節であれば、まあいいかなといった感じである。昨日(3月21日)は黄砂にみまわれて、部屋中が埃っぽくなっている。気のせいか埃の匂いがする様だし、目も何となくショボショボするような感じになった。忍ぶように入ってくる黄砂は、本当に細かな物である。北京の街は近くの建物でも黄砂で霞んで見えた。