北京の大砂塵
(3月9日)

  中国に来て五日目に早くも恐れていたことが起きた。大風が吹出したのである。去年も中国に来たので、大風が吹くのは知っていた。2月の27日に北京に到着して、3月の1日の夕刊を見たら、内モンゴルで今年第一回目の大風が発生したと書かれていた。北京にも影響があるだろうと書かかれていたが、果たして3月2日の夜中から大風が吹出し、3月3日は一日中、風が吹き荒れていた。恐れていることとは、風の強さでは無く、風に伴う砂嵐である。住んでいるところは5階であるが、窓の隙間から土砂がたっぷりと吹きこんでくる。窓際の棚はすぐに、砂だらけになる。窓のそばにあるベットの上も砂だらけ。数日前に砂だらけの部屋の中をやっと綺麗にしたばかりなのに、このありさまである。勿論街に出てみれば、風がゴーゴーと吹き荒れていて、土埃が顔に当たり、目にも飛び込んでくる。遠くの建物は砂埃で霞んで見えた。建物の角には、吹きつけれられた土砂が堆積している。

  部屋の北の窓は一応ニ重のガラスになっているが、二枚ともガラスと桟の間が隙間だらけなので、強風によって自由に土砂が吹きこんでくる。吹きこんだ土砂は部屋中を砂だらけにして、食器入れの棚の中まで細かな埃が入ってくる。このあたりのアルミサッシの品質は相当酷い。隙間がタップリとあるだけでなく、まともに動かない。動かそうものならキイキイ言う。キイキイいうだけなら何の問題もないが、窓本来の役割である、外気を遮断して埃を防ぐ作用が無い。開け閉めもままならない。かなりの問題がある窓でる。更に決定的欠陥を発見してしまったのであるが、何んと窓枠と建物本体の間に、大きな隙間が出来ていて、そこから土砂が隙間風と供に飛び込んできていた。

  その隙間には濡れタオルを押し込んで、土砂の進入を防ぐことにした。それにしても、隙間は塞ぐこと、タイルは剥げ落ちない様に張りつけること、水道の水が漏れないように継ぎ手を締めつけること、窓枠の角を90度にして、窓の角も90度にすること、このような基本的な事はちゃんと工事して貰いたいものである。

  ちゃんとして貰いたいなどと偉そうなことを書いてしまったが、苦情をこの家の大家さん言っている訳ではありません。この家は会社の社宅のような形で、只で借りているのである。テレビや冷蔵庫、炊飯器(日本製、やはり中国のものと違って品質は良い)まであって便利に使わせてもらっていて、快適な住居である。となると誰にクレームを付けているのか判らなくなってしまったが、兎に角気になるのは、品質とか家の建て方である。この家の、上の家も横の家も、騒音や話し声が凄くよく聞こえ、音もよく伝わる。もしかしたら私の鼾も聞こえているのかもしれない。

  こんな砂嵐なので、外に出る気も無くなった。埃だらけの街の食堂では、食事をしたくないと思って、自分の部屋で食事を作ろうかと考えたが、煮炊きをする所も砂だらけなので、これも止めてしまった。このあたりの、アパートの大部分の家では、ガスコンロがベランダにおいてあって、そこで炊事をするようである。流し場は本来の台所にあるのに、ガスコンロはベランダにある。不便だと思うのであるが、ベランダの有効活用と言う訳なのであろう。ベランダと言ってもそこは一応、ガラス窓で囲われている。ベランダをガラス窓で囲い、部屋のようにして使うのは中国では当たり前である。であるから日本のように洗濯物や布団をベランダに干してある光景が中国では見られない。ベランダを囲ってしまっているからである。囲ってあるといっても、この窓が例によって隙間だらけなので、ここも又砂まみれになってしまっていた。

  こんな砂嵐の中ではあるが、街の中の小さな食堂では、店の外で面の粉を捏ねていた。この状態では、たっぷりと砂ぼこりが面の中に入っていると思う。やっと有線テレビが見える様になったかと思ったら、また突然見えなくなってしまった。後で聞いたところやはり大風の影響でどこかが壊れてしまって、テレビが見えなくなってしまったらしい。その後一週間近くになるが、有線テレビは未だ見える様にはならい。