蒸し暑い日には
(9月5日)


  暑い日と、暑くない日とでは、自分の気分があまりにも違う。私の体は暑さと湿度に直ぐ反応して、汗だらけになってしまう。7月末から8月初めの、北京の湿気と猛暑は凄かった。会社に来てさえもクーラーの効き具合が悪い部屋にいるものだから、そこでもいらいら、いらいら。隣の部屋は6個のクーラーの噴出し口が有るのに、私が居る部屋は1個だけしか無い。隣部屋と私が居る部屋は、大体同じ大きさなのにである。中国の設備と言うのは、見た目に日本と同じでも、中身には結構問題がある。外気温が上がるとクーラーの温度も上がる。外気温が下がるとクーラーの温度も下がる。これではあまりクーラーとしての意味が無いのではと思うのだが。

  気温と湿度が高いと、バスに乗っていてもふだんは気にならないことが気になってしまう。河の傍を通ると悪臭が紛々とする。こんな時は、窓から入る風も、扇子で扇ぐ風さえも蒸し暑くて効果が無い。実際この臭いは、暑くなると激しくなって、新聞にもあちこちの河で悪臭がしだしたことを伝えている。河だけでなくて、水溜もあちこちにできて、そこへ排水が溜まったりして、これも悪臭の原因になる。私が通勤する道は、一年前に出来たばかりの、高速道路の側道なのであるが、一ヶ月前に大雨が降って以来、未だに水が引かず、自動車は水を蹴散らして走らなければならない。これも臭い。

  ゴミ溜めにもゴミが山のようになっていてこれも臭い。道路の側溝の水の上にもゴミが浮いていて、無残な様子である。こちらではゴミを実に気軽に捨てる。バスの窓からも、アイスクリームの容器やミレラルウォーターのペットボトルを、気軽にポイトと捨てる。捨てる方も悪いのであるが、回収のシステムも悪い。家庭の排水や工場の汚水が、直接河に流れ込んでいるようである。雨が降った後、あちこちに水溜りが出来るのも、排水がうまく出来ないせいである。臭いゴミの山が出来るのは、決められた場所以外の処に捨てるからなのだろうか。どうもある所ではゴミ回収のシステムが無いようにも見える。

  バスから見える落書きのような広告が汚い。小さい張り紙による広告も、暑くて気分が悪いと気になる。電話番号と、漢字二文字で"辨証"と書かれた組合せがとても多い。これはマジックやスプレーで汚らしく書きなぐられている。ある人に"辨証"の意味について尋ねたところ、証明書を作るとか、斡旋するとか、何とかすると言う意味らしい。勿論偽の証明書である。偽の卒業証明書だとか、偽の営業許可書だとか、中には偽の死亡証明書も作ってくれる処もあるらしい。破産したとき、死亡証明書があれば、家族は借金逃れが出来るらしい。そんな需要がどの位あるのか分からないが、こんな広告はとても多い。その汚さがあまりに目に付いて気なってしまう。

  バスから空を見ると、いつも遠くのビルが霞んで見える。このような日が毎日続いている。このスモッグのようなガスのようなもののお蔭で、日差しが強くないのはいいのだが、天気予報は太陽が霞んで見えるにも関わらず、晴れで、紫外線が強いと予報している。一体この霧のような物は何なのだろう。これが出ると湿度が高くなるような気がするので、水分を含んだ霧のような物には違いない。天気予報はこの霧のような物を全く無視している。この霧が晴れれば、紫外線が強くなるかもしれないが、この霧は一日中晴れないのである。どうしてこのスモッグのような霧を無視するのだろうか。不思議な天気予報である。

  その天気予報であるが、天気予報は昨日も今日も32度。しかし昨日(9月1日)の実際は35度、今日(9月2日)は28度位しかなかったと思う。今日から気温は急に下がり出したのであるが、それを全く予測できていない。中国の天気予報はかなりいい加減である。暑くていらいらしている日は、この天気予報のいい加減さも気になる。

 翌日の新聞には、9月1日は35度あったが、3日には21度に、二日で14度も下がったことを伝えていた。私が新聞を買って読んだ理由は、2日から温度が急に下がってことを予測できなかったことに対して、何か新聞の指摘があるのではと思ったからである。しかし天気予報のはずれには、全く言及していなかった。この程度の天気予報の外れなど関心がないみたいであった。

 9月2日以来気温が急降下したので、あの湿度と暑さによる、気分のお悪さはなくなった。暑さだけならば、あまり絶えがたいとも思わないのだが、北京あたりでは蒸し暑い日が結構あった。