中国の新聞記事から
(4月22日)

  中国の以前の新聞は薄っぺらであったが、今は随分厚い新聞になった。新しい新聞が出来て、競争も激しいようであるから内容も豊かになった。しかし日本の新聞と違うところも多いのである。

  中国の新聞の記事は、何故か記者の第一人称の文体で書かれた記事が多い。日本の記事では「どこどこの発表によると」と書かかれているが、中国の新聞では「記者がどこどこに行って聞いてみると」になる。事件の記事にしても、「付近の住民の話では」、ではなくて、「記者が付近の住民から聞いたところによると」になる。何故このような書き方になるのか分からないが、自分の書いた記事を私が書いたと、ハッキリさせたのだろうか。

  ある記事によると、建設現場で食べる弁当の食べ滓が散らかって、とても汚いのだとか。食べ終わった使い捨ての容器を、気軽にポイト捨てるらしい。こちらでは実に気軽にゴミを捨てる(発泡スチロールやビニールのゴミを白色汚染と言う)。この記事の発端は、工事現場の近くの"張"という女性がたまりかねて、新聞社に電話したことによる。中国の新聞には、このように一般市民の訴えや、投書を基にして記事にすることがとても多い。そうすると正義の味方である記者が駆けつけて記事を書くことになる。それで記事の書き方は、「記者が張女士と現場に行ってみると」、という書き方になる。

  新聞社は、市民からの投書や通報は大歓迎である。それによってかなりの記事が成り立っている。いろいろの問題点を新聞に取り上げて、いろいろと啓蒙しようとしているらしい。しかし上記のゴミの問題でも、おいそれとは問題が解決しそうにもなかった。記者が現場の作業者に聞いてみると、作業員はゴミを管理する人が誰もいなから、その辺に放っておけば、そのうち風で飛んでいってしまうと答えていた。どうもこの記事の書き方は、ゴミを捨てることを問題なにするより、弁当屋が悪い、ゴミを掃除する人がいない、と言うことであるらしい。記事の最後には、建設現場まで売りに来る昼食屋は、不法営業だから取締る必要があると書かれていた。

  時々、北京の"都市文明"についての記事を見ることがある。中国語の"文明"とは礼儀正しくという意味があるらしい。今、北京には都市文明建設委員会と言うのがあって、まだ都市文明を建設中なのであるが、最近の5年間の"北京の都市文明"に付いては随分良くなったと書かれていた。しかし外地人の文明はどうなるのだろうか。さしずめ上記の建設現場の作業者は外地人であろうから、地方人までは文明が行き渉っていないのかもしれない。そう言ってしまったいいのだろうか。"文明"や"都市文明"の意味からするとどうもそのように解釈できるのだが。 良くなったといっても、ガーと痰を吐く人は沢山いるし、バスに乗るとき列を作らないし、ゴミを捨てる人も多い。あの人達は全部外地人なのであろうか。オリンピックまでに文明の普及が急務であるらしい。

  別のある記事では、病院の水道が止まってしまって、もう何日も水が来ないという記事があった。原因は近くで家を取り壊した際に、水道管が潰されてしまったのだとか。水道の管理局みたいな処に問い合わせると、そこの責任ではないと言い、工事をした処に聞くと、そんなことなしていないと言い、どこも修理をしてくれないらしい。病院がこんな状態にされたままで、放って措かれるなんて、どうなっているのだろう。オリンピックに向けていろいろと入れ物は整備されてきているが、制度や、管理の方法などにはまだまだ問題があるのかもしれない。

29両の盗難にあった自動車が、持主に返されたという記事があった。その返し方でるが、自動車を広場に並べて儀式をしてから、持ち主に返すのである。そして持ち主は感謝の言葉を書いた錦の旗を警官に贈呈していた。自転車の場合も、何百台もの自転車を広場に並べて、儀式をしてから持ち主に帰していた。病院でも、患者から医者に送られた錦の旗を見たことがある。大きさは相撲の化粧回しくらいある。警官や医者に錦の旗を送って感謝の意を表すのは、"文明的"な習慣なのかもしれない。それにしても警官の方は、泥棒を捕まえると言う当たり前のことをしただけなのだから、すぐ返せばいいと思うのだが、何故か感謝の儀式が必要らしい。

  実は中国の社会は感謝の儀式や表彰がとても多いのである。功績の合った警察官などは、表彰大会で表彰され、新聞やテレビで大々的に報じられる。不幸にして命を失った場合は、人民英雄になる。日本でも功績のあった警官は表彰されるが、多くの国民に分かるようには報道されない。しかし中国の表彰は派手派手にやる。学校の先生などもよく表彰されるし、国営の工場、会社などでも月代わりで、優秀社員の写真が張り出してあったりする。以前は商店の入り口の上に、"文明単位"だとか"明星企業"とか"優秀○○"とかが掲げてあった。これは表彰と言う飴を奮発して与えて、"文明"の方へと導いていく手段かもしれない。宣伝効果としては、沢山与えるだけではなく、それを国民に報せなければ意味がない。それで新聞の表彰の記事は、日本よりずっと多くなるらしい。

  新聞の話ではなく、テレビの話であるが、中国の飛行機が墜落した日の9時のニュースの順序は、江沢民主席が外国を訪問していたので、その記事が第一番で、次に江沢民総書記が航空の安全に関する指示を出したことを伝え、次に朱首相の被害者への哀悼のメッセージで、その次がようやく飛行機事故の話しになった。どうしても江沢民主席の活躍が第一のニュースでなければならないらしい。そして政府の幹部の気配り振りも先に伝えたいらしい。その後のテレビには、飛行機事故に付いての、日本の特番みたいな番組は無いらしかった。こういった記事はあまり大げさに伝えないという事だろうか。(その後台湾の飛行機会社の事故が有ったが、こちらの報道は結構詳しく伝えていたような気がする)

  新聞の話に戻ると、こちらの習慣では、結婚式の前か後に立派なアルバムを作るのであるが、これは結婚衣装をとっかえひっかえ着替えて、二人の写真を撮って作る。費用も時間も相当かけて、市内の有名な観光地に行って撮影したりする。新聞によると、その花嫁衣裳で皮膚病がうつるのだとか。何でこの記事が目についたかというと、私自身が皮膚病になってしまったからである。結婚衣装を着たわけではないが、毎日バスに乗って、汚いしわくちゃの小銭を掴んでいるので、皮膚病にかかったのかもしれない。花嫁衣裳は良く見ると汚いらしい。あまり洗濯などはしないのだとか。

  もう一つ衛生問題で気になる記事があった。この5月のゴールデンウィークに旅行に行くのであるが、ゴールデンウィークを前にして、ホテルの浴槽は清潔かとの記事があった。実際に安いホテルに泊まると、バスの栓がないことが多い。これは伝染病を恐れて、体をお湯に漬けることをしない人が多いのかもしれない。そうでなくても浴槽のお湯に体を漬ける人は少ないようである。中国には、お風呂で温まる習慣はあまり無い。それでバスの栓は必要ないのかもしれない。この記事を読むと、中国人の中には、ホテルの浴槽で伝染病に染らないかということを、心配する人がいるらしいことがわかった。