チョット腹の立つこと(3月10日)

  信号が青で横断歩道を渡っていると、斜め後からきた自動車がブーブー警笛を鳴らす。これは早く退けと言っている様でムッとする。何で警笛を鳴らされなければならないかと考えると腹が立つ。中国の自動車は、本通りに出る場合でも一時停止などしない(割り込み優先である)から、人が渡っている横断歩道の前で、一時停止などしたくないらしい。ここ中国では前がふさがっていない限り、一時停止などしない。赤信号の場合は別であるが。

  中国に居ても、どうしても日本の習慣と比較してしまう。先日のことであるが、突然電話が鳴り出し、おまえは誰かと聞いてきた。突然電話をかけてきて、おまえ誰かとは無いだろうから、"おまえこそ誰だ"と言って電話を切ってやった。間違い電話であるが、名前も名乗らず誰だと聞いてくるのは中国式である。これも日本式から比べて、チョット腹が立つ。

  春節(旧正月)の前に、タクシーで団地に帰ってきたら、団地の門のところで止められて、外部からの車は金を払えと言われた。頭にきたので誰が決めたのかと言ってやったら、保安員は会社が決めたとか言っていた。タクシーで自分の家に帰るのに、団地の入り口で金を払わなければ通れないなんて、全く馬鹿げたことである。確か一年くらい前も金の徴収を突然始めて、住民と揉めていた。そして暫くすると中止になった。今年になって又再開したようである。団地を管理しているのは、物業公司と言われる管理会社である。

  自分の住んでいる家まで行くのに、お金(大した金ではない)を払うのは、納得がいかないから、門の所でタクシーを降りて、怒った様子を精一杯見せて、タクシーのドアを荒荒しく閉めてやった。タクシーには何の責任も無いのであるが。中国語で喧嘩などとても出来ないから、態度で表したのである。やはり保安員も金の徴収は後ろめたいと感じているのか、何か言い訳を言っていた。

  しかし中国では、外から来た者から、お金を取りたくなるものであるらしい。北京にいる外地人(北京戸籍を持っていない人)からはお金を徴収するし、北京に入ってくる他の省の自動車は"進京証"という交通手形みたいなものが必要である。北京市内に行く途中に在る村の入り口に、"外部の自動車進入禁止、違反者は罰金50元"と書かれているところがあった。中国では国立公園に入るだけでお金を取る。道路でもいろいろな名目で通行料を取るところがある。これは"乱収費"と言って政府が禁止している行為であるが、団地の物業公司はこれを真似たのかもしれない。しかし今年の徴収も、又暫くして中止になった。

  また、団地の周りにぐるっと塀を巡らして入り口が少なく、買い物に行くのが不便なのは、腹の立つことである。このことは以前に書いたが、利用者の便利性などは全く考えていない。最近、付近の住民がこじ開けて作った塀の隙間を通ったが、隙間が狭いので、出っぱっている腹がつかえて、なかなか通れなかった。

  先日、バスに乗った時、1.5円くらいのチャチなアルミのコイン20枚で、30円のバス代を払った。そしたら車掌に拒否された。他にお金が無いかと聞かれたので"無い!"と言ってやった。そして"これは中国の金ではないのか?"と聞いてみた。なおも車掌が何か言っているので、ここで頑張ってみるかと身構えたが、この時は、同じ会社の社員が乗っていて、私の分を払ってしまった。その社員が言うのには、中国には自動販売機が無いから、ここではコインは通用しないと言っていた。

  何だか良く分らない説明であったが、中国の正規の硬貨がバスで通用しない理由を説明するのに、困ったのかもしれない。とにかく正規のお金が通用しないのでは困る。翌日もこのコインで支払いをしてみたが、この時は何の問題も無く通用した。

  中国の道路の工事は凄い。通行人の都合など考えないから、通るところも無くなってしまう。不便になるだけでなく、危険なところさえある。土埃なども相当凄い。そして工事の予告なども無いらしい。ある時大きな道路工事があって、バスが通れなくなってしまった。待っている人は理由が分らなくて困っていたが、バス会社の方からも通告が無かった。このようなことがあっても、こちらの中国人は私の様には腹を立てないようである。

  こちらではゴミをやたらに捨てるが、これは非常に気になる。しかし直接自分が迷惑を受けることでもないから、腹が立つと言うものでもない。しかし上の窓からゴミが落ちてきたて、私の部屋に入り込むと、これは腹が立つ。団地の階段もしょっちゅうゴミが散らかっている。これにはもう慣れたが、階段にはゴミを散らかさないでほしいものである。
 
  先日、中国に入国する時、開けたばかりのゲートに近づいたら、まだ準備が出来ていなかったのか、検査官にイヤーな顔をされて、あごでしゃくられて、別のゲートを指示された。これには一言いいたかったが、言わなかった(言えなかった)。

  列への割り込みはずっと少なくなった。少なくなったが、今でも結構ある。北京のバスへの乗り方は大体押し合いへし合いである。これにももう慣れたので、肘を張って割り込みを防ぎ、自分でも力ずくで進んで行く。

  ところでこう言った中国のやり方や習慣で、これから世界に通用するものが在るのだろうか。中国がWTOに加入したと言っても、交通ルール、会社の契約や取り引き方法、食事のマナーなどにしても、中国式で世界に通用するものは多くない様に思える。中国料理は通用するかもしれないが、一種類の料理を、一人では食べ切れないほどに盛り付けるなどは、これは世界に通用しないのではと思う。中国式共産主義なんてのも、今ではあまり流行らなくなった。

  世界的に優勢なのは何と言っても西洋式制度・習慣である。その最たるものは“法に依って”と言うことではないだろうか。それで今まで少なかった法律が次々と作られてきた。庶民のレベルでは“新しい文明を作ろう”なんて標語も在る。具体的には“文明乗車”をすることであったりする。この場合の“文明”とは、並んでバスに乗るだけのことであるのだが。日本を含めた西欧にはあったルールが中国には無かった。ルールが出来たとしても定着するのはなかな難しい。今でも“盗版”と言われる映画やプログラムソフトのコピーが、沢山出回っている。安い“盗版”品の方を買うのは、中国人の常識かもしれない。

  チョット腹の立つことについて書いたが、実は最近ではずっと少なくなった。これは中国の生活に慣れたからかもしれないし、こんなものだと思えるようになったからかもしれない。最近、私の部屋の電気工事をしてもらったが、部屋の中を埃だらけにされ、取り外した部品はそのままにして帰っていってしまった。しかし腹は立たなかった。中国の家の工事は、レンガやコンクリートに穴を明けたり、釘を打ったりするので埃は凄いのである。慣れたと言うだけでなく、制度も随分改善された。西洋式になったとも、日本式になったとも言える。良く見ると日本式が中国に入ってきているのも結構ある。例えば"お客様は神様です"とかの言い方、考え方なども輸入物であろう。おつりを放り投げて返されるなんてことが無くなった。