杷木地方の民話:星丸の七迫

 
 むかし、星丸(ほしまる)にゃ迫(さこ=谷のこと)が七つあって、景色も良かし、えらい住み心地の良かとこじゃった。
 いつ頃からじゃろか、こん星丸に、権現様と山姥(やまんば)が住んじょったげな。
 権現様も山姥も、ここを我がだけもんにしようと思うち、二人はいつも喧嘩ばかりしよった。
 山姥は、なんとかして、権現様を追い出そうち、色々考えよった。


 ある日、山姥はいい事を思いついて、権現様にこげなこつを言うたげな。
 「権現さんや、喧嘩ばかりしよったっちゃ、らちぁあかん。ここへんではっきり、ケリをつけようじゃないか。わしが、星丸の七つの迫ん中ん一つを隠す。お前さんがそれを見つけきらんじゃったら、お前さんはこの星丸から出て行く。見つけきったらわしが出て行く。どうかな、権現さん」
 いつもは穏やかな権現様も、これを聞いて、ついムカッとして、思わず「なあんだ、そんな事か。よし、わかった。いつでもいいから隠してみろ。見つけ出せなかったら、私はすぐにでもここから出て行ってやる」と、山姥に言うてしもうたげな。
 それから何日か経って、山姥は権現様に気づかれんごつ、一つん迫を隠したげな。

 権現様は、さっそく山姥ん隠した迫を探したばってん、どうしても六つしか見つからん。こりゃあえらい事だと本気で探しなさったばってんか、不思議な事に、やっぱ見つけることがでけじゃった。
 権現様ははがゆうしてたまらじゃったばってんか、約束なき、とうとう諦めち「えーい、こんな所に居るもんか」と言うち、獅子に飛び乗り、後も見らんな、山奥に飛んで行ってしもうたげな。

 むかし、星丸にゃ迫が七つあったちいうが、今は、「砂原迫」「正信迫」「迫」「池の迫」「長迫」「いごの迫」の六つしかない。もう一つん迫はどこにも見当たらん。それが山姥が隠したちいう迫じゃなかろうか。
 星丸にゃ、今も「権現松」やら「姥山」ち言う所があるき、こん話は全くの作り話じゃなかろうごたる。


終わり