杷木地方の民話:力持ちの嘉作(かさく)

 
むかし、松末(ますえ)ん赤谷(あかだに)村に、嘉作ちゅう えらーい力持ちの男がおったげな。
嘉作は力も強かったばってん、食う方もたいしたもんで、一升飯をいっぺんに ペロッと食うたっちゃ、まだ食い足らんごたる顔をしよったち。

子供ん頃、こげな事があったげな。
ある日、おっかしゃんが、
「嘉作やい、米搗(つ)きに行ってくれんか。」ち言うち、米一俵を背中にかるわせち、半道(はんみち=約2キロ)ばかりん所にある唐臼(からうす)まじ、米搗きに行かせたげな。
ところが、いつまでたってん嘉作が帰って来んき、心配して迎えに行ったら、こりゃまたどうかいな。嘉作は米一俵を背中にかるたなり、谷川ん中をごそごそはいまわって、カニを取りとり帰りよったげな。そんなかっこうは、まるで、枕どんかるちょるごたったき、さすがに家ん者も、たまがってしもたち。
今度はな、嘉作が青年の頃ん話ばい。
ある日、領内を見まわりよったお役人が、赤谷にやって来たげな。そんときゃもう晩方じゃったき、そん日は地主さん家に泊まるこつになったげな。
一日中歩きまわって、くたびれっしもうたお役人は、用意しちゃった風呂に入って、よか気持ちになり、鼻歌どん歌いよったげな。そしたらくさ、急にものすげえ夕立が降ってきたげなたい。お役人が入った風呂は露天風呂じゃったき、雨がザーザーちお役人の頭におてちきたげな。
まっ裸んお役人は、風呂からあがるにあがれず、家ん者も、どうしていいか分からんもんなき、まごまごしよったげな。そん時、ちょうどそこを通りかかった嘉作が、お役人が入っちょる風呂桶を、「どっこいしょっ」ち、軽々と持ち上げち、軒下まじかかえち行ったげな。
風呂ん中んお役人も、これを見た近所ん人たちも、嘉作の怪力に、たまがってしもうたちいうこったい。

ついでにもう一つ話してやろう。こん話は、嘉作が久喜宮ん上野ちいう所に作男になって働きに行きよった時の話ばい。
ある日んこつ
「嘉作よい、田の畦をふんで来ちくれんか。しっかりふんじょってな。」
ち頼まれち、畦ふみに行ったげな。
晩方、畦んふみ具合を見げに行った雇い主や、たまがってしもた。畦はふむこたふんじゃったばってん、人一倍力ん強え嘉作が、言われたとおり力を入れちふんだもんなき、畦はあっちこっちふみくずされちょったげなたい。
時々こげなへまはするばってん、嘉作が正直で働き者じゃったき、誰からも可愛がられたげな。

終わり