ふくらみ

旅の予感が次第にこみ上げてくる
全身を締めつけるような寂寥への憧れ
ディーゼル車とさびれた駅と・・・
何処にでもある風景の中に立止まる時
ただ、生活を離れて、今、僕は遠くここまでやって来た
そんな気持ちだけで全ては違って見える
そんな感覚を全身で感じたい

そして旅の予感がこみ上げてくる
列車が東京へすべり込む時の
あの胸の高鳴りを憶えている
旅の終りの名残惜しさと、そして逆に
帰ってきた、という哀しいほどの安堵
それだけで僕の街は違って見える
そんな感覚を全身で感じたい

こみ上げてくる、旅の予感が
きっと僕は出かけるにちがいないと知っている
きっと僕はとび出すにちがいないと知っている
もう少しで、もう少しで―――
僕には分かるんだ、旅の予感が

    (1984.7.4)



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