変質

くらし

言葉は絵画とは異なる

塗りつぶされてゆく
塗りつぶしてゆく
見ないため
知らないため
拒否するため

空や雲は要らない

くらし

かつて空想というものがあった
それは現在
フィルムから焼き付けるのではなく
視覚と聴覚に対して直接定着されている

くらし

生きることは
視覚と聴覚にのみ還元された
いずれ
残りの感覚へも還元されるだろう

くらし

抽象的な概念だけが浮遊し
無数のデータへと変換されてゆく

くらし

街は我々を囲い込むための結界となり
あたかも別次元であるかのように隔離する

くらし

小さな窓から
別の小さな窓へと
移動を繰り返し
その窓の向こうでのみ交差する

くらし というもの
そのものの変質

    (2016. 6. 9)



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