暑熱の夕暮れ

オレンジ色の夕暮れ時
犬達を散歩に連れて歩く人々と擦れ違う

白い服、麦藁帽子
暑熱の大気に漂うもの―――

彼女は小さな窓を見つめている
錯覚という別の世界を覗いている

去勢された美が
均整の取れた造形として時間を無視している

僕は再び始めからやり直さなければならない
何も残っていないことに感謝しよう

かすかな息苦しささえも蒸発させてしまう―――
時計の秒針は存在理由を失っている

くすんだ色の額縁にはめ込まれ、干からびたた本能が小さく呟いた
「化石として見出される時を待て」

飛べ
飛べ

この白い皿
大いなる絶滅期

潮が掻き消す臭い
継ぎ接ぎされる時計

   虚栄としての思想
   創造という偽善

   意思という名の臓器
   暮らし、という皿

    (2015. 8. 7)



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