遺書

現在から最も遠い季節に向け
私は輪廻を説いている

笑み
讃む歌としてのレクイエム

   道路いっぱいに散り敷いた
   白や薄桃色の花びら

   それを見下ろすように吊るされた
   白や薄桃色の洗濯物たち

   枝には赤黒い蕊が残されて
   黄緑色の若葉が芽吹いている

この世を操っている不気味な奴ら
私以外の総てがそれに属している

生きる意味を説く者たち
彼らへの羨望はもはや消え失せた

   乱反射する白と青
   その目映さとまろやかさ

   薄い色をした砂粒が
   きゅるり、と音をたてている

   何もない、ということ
   単に、包まれている、ということ

私はやむを得ず、抽象的風景に逍遥する
それを巡礼と呼ぶことができるなら

遺書、と書きさえしなければ
日記とみなされるに違いない

   逃げてゆく季節
   遠ざかる季節

私はこの世界を生きない

     (2012.4.22_5.20)



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