
汀
オレンジ色の反射に次ぐ反射
静かに砂をなめる泡交じりの海
私はあらゆることに自信を失っているが
いつもその私の周りではしゃいでいる君
浮き上がり、そして吸い込まれる
近付き、そして遠ざかる
この砂をひとつまみずつ手に取ってみることで
あるいは語ることができるのかもしれない
波の先端で砂粒同士がこすれ合う音は
長い髪が風に流れる時の音に似ている
私はいつからか写実を放棄し、それと同時に
自分が何処にいるのかを見失った
陽射しは空から発せられているのではなく
むしろ水面から輝き発せられ、渡ってくる
君はいつでも私におかまいなくはしゃいでいたが
私の傍らを離れることは決してなかった
私たちの視線が交差することもなかったが
どこかでその視線の幅が重なり合っていたのかもしれない
次第に薄暗くなってゆく中で
私は足元の砂の感触を確かめ
そして君を呼び寄せた
(2011.6.11)