予感

遠い海が攻め寄せてくる
東の涯

   (湿り気を吸い上げようとする低い雲)

風がやってくる、そして雲も
陽光の桟橋を渡り

光源から発せられる
熱のない眩しさは美しい

   (風に吹き煽られる音の粒)

1行より長い言葉の連なりを
僕は綴ることができない

磐の周りを波が
もだえ苦しむようにのた打ち回っている

翡翠色の波が僕を破壊する
粉々に

円を描き、褐色の鳥が滑空し、目の前を過ぎていく
その大きな影が僕を掠め、去ってゆく

お前は怖れ慄いている
この岬が崩れ落ちる予感に

孤独であることを好む僕には
独りで流す涙しかあり得ない筈だったが―――

薄衣を通して僕の指に伝わる
お前の肩のなめらかさと、震え

   (不覚にも止めることのできぬ涙)

せり上がって来る巨大な海原
我々を生んだお前の生贄になら
おお、僕たちは喜んでなろう

      (2010.1.3)



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