
早春
疲労の中にめり込んでゆく
細い枝々が ゆうらり、と
また、ゆうらり、と交叉する
そこに見開かれた微かな花々
透明ではない薄紙
ひかりを呼吸する薄紙
それらを愛で
そして
沈み落ちてゆく
これから始められる交合
これから始められる死滅
その同義であることを謳歌する花々
ある者は意思、という
しかし
ある者はたくらみ、という
限りなくほそい毛細血管
あるかなきかのようなそれらを透けた
肌
あわあわとした
触れたい、というそよぎ
ひとしずくの媚薬
その樹木のはるか向こうから
その枝垂れたすぐ先へと流れる川
みず
力なく風にそよぐ腕を取り
その意外な重さに
するりと抜け落ちる想い
哀しみを増幅する何者も居ない
その故に
涙は止まることを意思しない
ひらひらとはためく花弁
それらに歌を強いる者こそ
我を生かしむる者
(2009.3.30)