
春
生温かい南風にふくらんでゆく
幾重にも畳まれた花びらが目を覚まし
抑圧された患者の肌からじわじわと沁み込んでゆく
やみくもに変換された言語の列
みすぼらしい肉体が装飾されてゆく
その内側で膨れてゆく精液の船溜まり
ブーメランのように弧を描いて飛び回る
挑みかかるような、なまめかしい肌触りの音
陽光は、とりわけ黄色いものを輝かせ
地底の奥底深く埋めたはずのものを浮き出す
滴り落ちることをためらう真っ赤な液体
花粉に覆われた埃っぽい地面がお前を拒んでいる
時間
不在
指先が勝手に添えられる
温いものへと
減数分裂
春に息絶える者
既に狂気は消えている
瞑想へ、ひたすら瞑想へと逃亡した
やがて、それらのうねうねとした
あるいは茫々とした軌跡は蒸発するだろう
満開の、薄桃色の木々、また木々
その梢と梢の重なりあう下で
(2009.3.22)