汀

暖かな日差しが
息詰まるような
穏やかな時間を
船溜まりに映す

彼方から寄せてくる雲
そして
舐めるような
スローモーションの波

己が掌に視線を落とす
職人的な日々の連なり
あの波のようなものが
次々透けて見えてくる

斜め左上から僕を見る者
一様な砂模様が
静止へと
にじり寄る

己が掌に視線を落とす
そこに流れるものから
静かで温かな声がする
かすかな呼び声がする

目の前に広がる母なる故郷
この身に潜む舞曲
うた―――
吹き込まれたもの

己が創造物達に傅かれ
それらの謳歌するところの
瓦解という未来を選ぶことはしない
僕は堂々と帰る

      (2009.3.17)



Copyright(c) 抒情詩のページ 葉擦れの地、Digitalize  Author:Shionagi_buchi(汐凪ぶち) Since:2015 All Rights Reserved. Design by http://f-tpl.com