
汀
暖かな日差しが
息詰まるような
穏やかな時間を
船溜まりに映す
彼方から寄せてくる雲
そして
舐めるような
スローモーションの波
己が掌に視線を落とす
職人的な日々の連なり
あの波のようなものが
次々透けて見えてくる
斜め左上から僕を見る者
一様な砂模様が
静止へと
にじり寄る
己が掌に視線を落とす
そこに流れるものから
静かで温かな声がする
かすかな呼び声がする
目の前に広がる母なる故郷
この身に潜む舞曲
うた―――
吹き込まれたもの
己が創造物達に傅かれ
それらの謳歌するところの
瓦解という未来を選ぶことはしない
僕は堂々と帰る
(2009.3.17)