少女く

東屋の下に頬杖をつく僕の視線のすぐ先に
細長い木のベンチに座り
茫漠とした
しかも騒々しい真昼の光に覆われた海原を
飽かず眺めているお前

白くごつごつとした石垣が
まるで砲台のように突き出ている岬の上で
僕たちは他人であるかのような
また
親子であるかのような

探り合うようにして
270度の眺望を共有し
お前は柔らかそうな帽子に手をかける
時折吹く涼しい海風が
その帽子を私のもとへ運ばぬよう

息苦しさなど微塵も無い
ただ
ほんの少し喉が渇くほどの
そんな
官能的な糸をかすかに引き合うひと時

ため息一つ洩れることもなく
遥か沖合のたゆたいのような
この場所
お前は振り向こうとはしない
何かを待ち受けたまま

僕は頬杖をついたまま
お前の後ろ姿を眺めている
その石垣を超えて飛ばそうとしている―――
それを見送り
その代わりに
満たされることを希求する
お前の胸の引出しを温めるべく

   (2008.10.4)



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