
救世主の横暴
(永遠の眠りへと誘う橋がある
それを渡る前に、せめてひととき
まどろむことを許したまえ )
「それは許されぬ」
*
システムが俺達の後を無言で尾行する
誰ひとりその事実を口にしない
はっきりとわかっていながら・・・
社会はあいつらと取引を継続している
指先で何でもこなせる便利さと引き換えに
社会のあらゆる統制を委託する、という―――
まるで魔術のように
大気に満たされた警告の文字
一度躓いたら、それが最後なのだ、という
ある指導者は分かっていた
「再チャレンジ」の困難さを、そして
自ら押し潰されていったのだ
競争原理プログラム―――
その中に「慈悲」の文字はない
システムにとって不要なその文字は・・・
お前が俺の退路を断ったのだ
そして俺の手を衝き動かしたのだ
前へ、ひたすら前へと
己が死さえ選ぶこともできず
削除されることを思い、さまよう・・・
そして線路へと突き落とした―――
滑り込んでくる電車の重量と
車輪と線路との間のわずかの摩擦
それが俺の罪状を左右する
*
(永遠の眠りへと誘う橋がある
それを渡る前に、せめてひととき
まどろむことを許したまえ )
「それは許されぬ」
(2008.3.30)