檄文

詩人たちよ叫べ

かつて産業革命の際に
煙を吐き出しながら
冷徹な力で人間たちを使役した
あの黒い蒸気機関のように
今、我々を使役しているものを見よ

まるで不規則な運動をするゼンマイ時計のように
チチチチ・・・と、かすかに呟きながら
我々の手首から先の動きだけを受けて
まやかしの世界を浴びせつける液晶画面―――

棄て台詞が撒き散らされている
撒き散らされたもの全体が
無数に、ゆるく、絡み合う

F(x)
G(x)

装飾の限りを尽くし
ひたすら我々を吸い寄せ続ける

五感はそれぞれの部屋に押し込められ
それぞれの最大限の飽食を漁り尽くしている

詩人たちよ叫べ

我々が何ゆえ詩人でなければならないかを示せ
我々が叫ぶ相手は誰かを思い出せ
己を表現すること―――すなわちそれが
現代の偽善を表現することを思い出せ

我々の武器は言葉だけではない
五感すべてを武器とせよ
全身を挙げて戦え
五感を分断と安楽死から救い出せ

詩人たちよ叫べ

孤独であることから逃げ出すな
外部生命体が提供する安易な暖炉に集うな
それに惑わされた群衆は
既に理性を喪失していることを知れ

戦うべき相手は群衆の中に巣食っている
我々が愚鈍な奴隷ではないことを示せ
我々の手には
見えない手錠が嵌められていることを示せ

詩人たちよ叫べ

己のために涙を流すな
創造神となろうとする空しい希望のため
ただ外部生命体を積み上げる愚かな群衆のために
それが死を意味することを知らぬ愚かな群衆のためにこそ流せ

詩人たちよ叫べ

小説家でもない
音楽家でもない
科学者でもない
映像作家でもない

我々のみができ得ることを
五感を挙げて示せ

   (2008.2.4)



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