
網
言葉なく
風に這う砂
風紋を見つめ
ハマヒルガオの種子が
枯れ落ちた花の後に実っていることを
改めて知る
風は強いにもかかわらず
波頭は穏やかに岸に寄せている
私は網―――
何ものも掬うことのできぬ網
弓なりに長く続く砂浜は
遥か水平線に目をやっている
足元を這う白い砂粒は
時折、目映く明滅する
白い貝殻
背の低い松の列
向かい風に静止するコアジサシ
風の彼方にある空
私は告げられる
「この海の傍で死ぬ」と
私は網―――
何ものも掬うことのできぬ網
ただ、風を空しく素通りさせるだけの網
(2007.6.13)