忍び込んでくる冬の大気は
心地よく肺を冷やす
彼でもなく
彼女でもなく
此処でもなく
彼処でもなく
忍び込んでくる冬の大気は
裸の私を包む
住所でもなく
電話番号でもなく
基本台帳番号でもなく
名前でもなく
忍び込んでくる冬の大気は
うたを呼ぶ
私を立ち止ませらせることのできるものは
多くあるけれど
私を立ち止まらせないようにできるものは
ただお前のみ
忍び込んでくる冬の大気は
―――遊んでいる
メジロのつがいが椿を
順番にのぞいてゆく
昨日ものぞいていた
明日ものぞくだろう
忍び込んでくる冬の大気は
私に話しかけてくる
(2007.1.9)