装置

今や
神の被造物としてではなく
人間自らの被造物となった―――人間
これを何と呼ぼう・・・

自らの感覚をもディジタライズし
五感を自らの創造物たる他者に譲り渡し
その他者に操られることで平等を実現しようとする
それは何に対する恐怖なのか

かつては社会という名の他者―――
社会という名の亡霊専制君主が
その五感を抹消し
「死」にさえも無感覚とした時代があった

今もさして変わりはない
亡霊の正体は相変わらずわれわれの中に棲み
我々が崇拝する絶対的神、操縦者であり
我々が創造した他者なのだ

社会は人間性の自由を剥奪したが
今我々の中に棲むそいつは、ある種の自由を推奨する
と同時に、我を信ぜよと叫ぶのだ
まるで我々の医者であるかのように・・・

我々はその治療方針に従い
自らの五感を捨て去り
全ての感覚をディジタライズした上でこれを受容する
「装置」として
その治療の名は「ディジタライズ」
だが、その医者はその治療を「解体」と呼んでいる―――
我々はいずれ
それら「装置」の集合体となるのだ・・・

   (薬物を多用していた者は
    火葬に時間を要すると聞いたことがある
    生への執着の度合いに比例するとでもいうのだろうか
    それとも神が受け入れるのを渋るためだろうか)

今や
神の被造物としてではなく
人間自らの被造物となった―――人間
これを何と呼ぼう・・・

    (2003.10.12)



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