妖精豆知識 |
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妖精ってなんですか? |
妖精は「人間」でもなく、「死者」でもない。どちらでもあり、どちらでもないのです。妖精は中間のもの、そして天でもない地でもない「中つ国」が好きなのです。この世とあの世、現実と超現実のあいだですから、妖精が出てくる時間も、昼でもない夜でもない、昼でもあり夜でもある黄昏時だというわけです。それだけ妖精はとらえどころのない不思議な存在といえます。 |
妖精たちの姿を見る方法は? |
妖精はまばたきとまばたきの間にしか、見ることができないと言われています。それは、妖精たちが人間に見られることを極度に嫌っているからです。でも、妖精たちの姿を見る方法はいろいろあります。透視力がある人なら見ることができますし、あなたが普通の人間だとしても、足を透視能力者の足にのせ、その人の手を頭にのせてもらい、その人の肩越しに覗けば妖精を見ることができます。また、日の出前に摘んだ四つ葉のクローバーを頭にのせるという方法もあります。ほかに伝えられているものに「妖精の塗り薬」をまぶたの上につける、という方法もあります。 ルイス・キャロル(1832〜1905)が『シルヴィとブルーノ』のなかに書いた妖精を見つけるための条件は「まず第一に、とても暑い日でなくてはならない。それは文句なしと思ってくれなきゃね。そして、ほんのちょっと眠くなければいけない。でも、眼を開けていられないほど眠くては駄目だね。いいね。さて、暑い日。眠い日。それから君は、ちょっとばかり感じなければならない、あの妖気を。スコットランドではイーリーな気分と言う。そのほうがきれいな言葉かなあ。そういうふうな気分が、ただよっていなければ駄目だ。それから、コオロギが鳴いていないことだ。」 |
日本ではいつから「妖精」と言われるようになったの? |
「妖精」と言う語が日本で一般に用いられるようになったのは大正時代の頃です。明治34年、上田敏は「仙女の説」という小論を書いています。「フェアリィ Fairyに好訳字無し。ただ仮に『仙女』と呼びその性質の範囲を定め、輪郭を設くるのみ」と日本語に同じ概念がないことを指摘しています。そしてFairyを「蝶の化生」「虫の変化」のような「縹渺とした夢幻の仙女」といっています。この「仙女」という語はすでに『元亨釈書』(1332年)に用いられています。また、『風土記』では仙女に類する超自然の存在を「天女」「西王母」「乙姫」といった中国系の語で呼んでいます。 大正末期から昭和初期にかけて、アイルランドの詩を翻訳した西条八十は「妖女」(大正2年)を用いていましたが、アイルランド文学を頻繁に訳出した松村みね子は「フエヤリー」「妖精」(大正14年)を用い、芥川龍之介は「精霊(フエアリイ)」(大正13年)、菊池寛は「仙女」「女の魔神」(大正14年)という訳語を用いています。この頃「愛蘭土文学会」を作った吉江喬松たちが、作品の中で「妖しい自然の精霊」として「妖精」という訳語を頻繁に使い始め、この訳語が現代では定着しています。 |
妖精の語源を教えて? |
「妖精」フェアリー(Fairy)、そして日本の辞典では「小妖精」と訳されているエルフ(Elf)、さらにフランス系のフェ(Fay)の語源についてお話しましょう。 フェアリー(Fairy)は、中世フランス語フェ(Fay,Fee)より派生。ペルシャ語のペリ(peri)からとする説もあります。イタリア語ではファータ(fata)。語源はラテン語のファトゥム(fatum=運命、宿命、死)。ファトゥムやファータから派生したラテン語動詞ファターレ(fatare=魔法をかける、魅惑する)より、フランス語のフェール(faer,feer=魔法のかかった、魅惑された)が生成。ここから「幻覚」「魔法」を意味する中世フランス語の名詞フェーリー(feerie)が派生し、英語に入ってfayerye,faery,pharie,faerieと時代を経てさまざまな語形を経て、fairyに定着しました。 エルフ(Elf)は、古代ノルド語アルフル(alfr)、アルフ(alf)より派生。語源はラテン語アルブス(albus=白)あるいはアルペス(alpes=山)、北欧語エルフ(erf=水)。またアイスランドのアルファ(alfa)、アルファフォルク(Alfa-folk=守護神の名)より由来。古英語エルフ(aelf)は古代高地ドイツ語アルプ(Aelp)より派生。アングロ・サクソン語ではエルフ(Aelf)。古い語形にはaelf,ylf,alve,elbes,elvisなどがあり、elfとなりました。 フェ(Fay)は、フランス語のフェ、中世フランス語形はfae,faie。ラテン語のファトゥム(fatum)より派生しました。 |
妖精の容姿と服装は? |
体の大きさは、人間と等身大のものから、アリほどに小さいものまでさまざまです。変身可能で意のままに大きな怪物になったり小人になる妖精には、ボーグル、ホブゴブリンがいます。湖の精やハグなどは人間と同じ位の大きさ。モーキン、ドワーフは2、3歳児くらい、ポーチュンは昆虫、ムリアンはアリくらいの大きさです。 容姿は美しいもの、人間と動物の混合、醜く恐ろしいものまでさまざま。服装は毛むくじゃらで裸か、葉っぱ、苔、木の皮など自然物で身を包んでいるものが多く、鳥の羽や蝶・昆虫の翅、クモの巣、カビ、山羊の皮なども用いられます。色に関しては、「緑の上着に赤帽子、白いフクロウの羽」が一般に妖精が好む色です。この他、自然の保護色の苔色、枯葉色、そして黒、銀などがあります。 |
妖精の性質は? |
妖精は一般的にきれい好きで、清潔な炉端や片付いた台所、きれいな水を好むといいます。また、夜、月、人気のない野原など静かな環境に出没し、音楽や歌、踊り、乗馬、球技などを愛します。一方、自分達のプライバシーを侵害されるとひどく怒り、汚水や塩、鉄、聖書、ニワトリの声、陽の光などを恐れ、嫌うそうです。 |
妖精はいつ見られるの? |
人間に見られることを極端に嫌う妖精ですが、5月1日のメイ・デイや夏至前夜、ハロウィーンなどは妖精が人間界に近づく日だといわれています。なかでも真夜中や日暮れ、日の出の寸前、影の消える正午に妖精は現れるといいます。また、オリーブ油、バラの花びら、マリーゴールドでつくった薬をまぶたに塗ったり、四つ葉のクローバーを頭に乗せると妖精が見える、というおまじないも知られています。 |
妖精は何を食べているの? |
一般に妖精の食べ物といわれているのは大麦やからす麦の挽き割り、リンゴ、小麦粉、岩苔、ツルキンバイの根、ヒースの茎、牛の肉、ミルク、バター、ワイン、木の実、ベリー類などです。また、「妖精バター」と呼ばれるキノコの黄色いバター(古木の根から生える黄色い菌類)は好物のひとつだといわれています。 |
妖精の国はどこにあるの? |
一般に妖精の国は土の中にあるといわれていますが、その他にも海の彼方、波の下、湖の下、井戸の中にもあるようです。妖精の国の入り口として有名なのは、妖精の輪(フェアリーサークル、フェアリーリング)です。この妖精の輪に入ると妖精の国へ行けるそうです。 |
「自然の精霊」って何ですか? |
春の野に咲くタンポポやスイセンの花を見ていると、思わずひとつひとつの花の中に、それをせっせと咲かせている妖精がいるような錯覚を覚えたことはありませんか。さらに想像力を働かせてみると、アネモネは真っ赤なドレスの少女の妖精、アザミはいたずら好きの男の子の妖精、雪割草は慎ましい可憐な妖精乙女、そして豪華なバラは妖精の女王。そんなふうに思えてきませんか。イギリスの画家シシリー・メアリー・バーカーなどによって、こうした妖精たちは「花の妖精」「樹木の妖精」として視覚化されてきましたが、このイマジネーションは現代に生きる私たち日本人にとっても十分に共感し、共有できるものではないでしょうか。 当店ではこのシシリー・メアリー・バーカーのさまざまなアイテムをご紹介しています。 |
店名「Fairy Circle」の意味は? |
月夜の明かりに照らされながら妖精たちが輪になって踊る、という民族伝承があります。この輪の中に引きずり込まれた男が、妖精の音楽に浮かれて何日も踊り続けた話や、輪の中に落ちたら妖精の国に通じていたという話があります。実際イギリスでは、しばしばこうした「妖精の輪」(大体直径が30cmから1mくらい)が草原の上に見うけられるそうです。これをフェアリーサークル(フェアリーリングとも)といいます。お店の名前はこのフェアリーサークルからつけました。お客様を妖精たちに例えて、楽しくおしゃべりしたり、踊ったり、誰もが来たくなるようなそんなところ。そして、みなさんに一番近い妖精の国の入り口です。 |
終わり |
引用文献:妖精学入門、井村君江著、講談社現代新書 妖精の国の扉、井村君江著、大和書房 |
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