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◆改正外為法の施行
改正外為法が2月26日に施行された。この議員立法
の提出者として感慨ひとしおである。ここまで漕ぎつけ
られたのも多くの方々のご理解やご声援のおかげである。
心から感謝申し上げたい。特に今回は議員立法の形を
とったことに意味があると思う。政府がやらなければ
議員がやるという良い前例を作ることができたと自負し
ている。
法改正の眼目は経済制裁の発動要件を緩和したことに
ある。制裁の対象として念頭に置いているのは当然北朝
鮮である。今後は必要があればいつでも北朝鮮に対する
経済制裁が発動できるようになった。今まで日本政府は
口では「対話と圧力」と言いながら実際には圧力をかけ
る手段を持っていなかった。外交の駆け引きの道具とし
てはアメを与えるかどうかという選択肢しかなかったと
もいえる。今回、ムチを使うかどうかという選択肢も加
わった。それだけ外交カードが増えたわけである。政府
にはこうした外交手段を駆使して拉致問題・核問題など
の解決に努めてもらいたい。
◆改正への道(総選挙まで)
法律の詳細についてはすでにこのホームページの
『けんいちの主張』欄に昨年3月と6月の二回にわたって
記したのでここでは繰り返さない。むしろそれ以降の動き
を追補してみたい。
改正外為法の原案を作ったのは「対北朝鮮外交カード
を考える会」に集った自民党若手有志議員6人である
(注1)。この会が練り上げた案は自民党内で審議され、
昨年6月4日に部会了承、7月17日に政調審議会了承、
7月18日に総務会で了承された。これで党内の手続き
はすべて終了した。6人の私的な案から自民党の正式な
案となったわけである。すぐにでも国会提出したかった
が、時すでに通常国会の最終盤だった。提出しても時間
切れとなってしまい、成立の見込みはほとんどなかった。
しかもそう遠くない時期に衆議院の解散・総選挙が予想
されていた。そうなると「会期末で審議未了廃案」もし
くは「継続審議→解散で廃案」という可能性が高くなる。
これも避けたい。そこで残念だったがこの国会での提出
は断念し、仕切り直しをすることとなった。
迎えた11月の総選挙では外為法が脚光を浴びた。
選挙直前に拉致被害者家族会などが全立候補予定者に
外為法改正案への賛否を問うアンケートを実施したため
である。候補者の54.8%が改正に賛成した。当選者
に限れば実に81.4%の高率である(注2)。
◆改正への道(修正協議から成立へ)
当選者の多くが外為法改正は必要だと答えたことが
改正論に弾みをつけた。「対北朝鮮外交カードを考える
会」も再び成立のための働きかけを各方面に行なった。
同会のメンバー6名のうち衆議院議員は私を含め4名だ
が、幸いにして全員再選を果たしていた。12月には公
明党が自民党案を正式に了承する。自民党の中川秀直国
対委員長も次期通常国会で最優先で成立させたいという
意向を表明し、機は熟していく。
その通常国会が今年1月に開会した。総選挙後の最初
の本格的な国会である。自民・公明の与党だけでも法案
成立は可能だが、民主党の協力もある方がより円滑に成
立させられる。民主党も先の総選挙でマニフェストに外
為法改正を追加していたので総論は賛成のはずである。
そこで民主党との合意点を探るべく修正協議に入った
(注3)。協議は1月23日、26日の2回にわたって
行なわれた。自民党案を軸に議論が進む中、民主党側が
要求してきたのは次の二点である。
@経済制裁を発動する時は国会承認を行なうこと
A経済制裁を発動する時に政府が理由を公表すること
この二点を法案に盛り込めば、あとは自民党案に同意し
てもよいという姿勢だった。
協議の結果、@については発動後の事後承認として
盛り込むことで合意した。ただし国会承認の対象とす
るのは日本単独で制裁を行なう場合のみとし、国連決議
や多国間の合意に基づいて制裁に乗り出す時は承認不要
とした。Aは法案には入れなかった。政府が理由を示す
のは自明のことであり、あえて法文に書き込むまでも
ないからである。まして国会承認がある以上、理由も
言わずに制裁を発動することなど考えられない。ただ
この部分には民主党側のこだわりもあったので、結局
衆参それぞれの委員会の附帯決議で触れることになった。
こうして修正協議は合意に達し、外為法改正案は
1月28日に衆議院に提出された。自民・公明・民主
の三党が提出者を出しあう共同提案という形になった
(注4)。普通、国会というのは議員が質問をして大臣
・官僚など政府側が答弁する。だが議員立法の場合は
議員の質問に対して提出者の議員が答弁する。私も
提出者の一人として答弁席につくことになった。国会
審議の経過は以下の通りである。
1月28日 衆議院に法案提出
同日 衆議院財務金融委員会で質疑・可決
1月29日 衆議院本会議で可決
2月 5日 参議院財政金融委員会で質疑
2月 9日 参議院財政金融委員会で可決
同日 参議院本会議で可決・成立
2月16日 公布
2月26日 施行
通常国会では毎年100本以上の法律が成立する。
その中で本法案は今国会の法案成立第一号となった。
共同提出政党の自民・公明・民主の三党は改正案に
もちろん賛成である。共産党は反対した。醜態をさら
したのは社民党である。社民党は衆議院では賛成した。
ところが参議院の採決では福島瑞穂党首を始め全員が
棄権するという迷走ぶりを示した。北朝鮮寄りと見ら
れることを避けるため一旦は賛成してみせたが、やは
り「北の代弁者」という本性は覆い隠せなかったとい
うことだろう。
◆北朝鮮に迎合する共産党
では共産党はどのような理屈をつけて反対したのだ
ろうか。彼らの主張はこうである。
“03年8月に北京で日米韓中露と北朝鮮の六カ国協
議が行なわれた。そこで6項目の合意がなされた。
その第4番目に「六者会合の参加者は、平和的解決の
プロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらないこ
と」とある。外為法を改正することは「状況を悪化さ
せる行動」でありこの合意に違反するので反対する”。
実にまわりくどい論法である。普段は政府を攻撃して
いる政党がこうした時だけ政府間の「合意」を盾に論
陣を張るのも奇妙なご都合主義である。しかも「合意」
といっても実際には文書化できず口頭で総括されただ
けのものである。薄弱な論拠をやっとのことで探して
きたという気もする。
そもそも「状況を悪化させる行動」をとっているの
は北朝鮮である。今後もとり続ける可能性は十分ある。
外為法改正がなければそうした時に制裁措置を打ち出
すことさえできない。同党は北朝鮮がどんな無法行為
をしても対抗手段をとれないままで構わないと考えて
いるのだろうか。さらに言えば、北朝鮮にカネやモノ
が無制限に流れ込むことを放置している方が彼らの核
開発やミサイル開発を幇助し、かえって状況を悪化さ
せるということも十分ありえる。
共産党は党大会決議で「北朝鮮問題の解決は、あく
まで外交的・平和的手段によるべき」と強調している。
それには私も異存はない。しかし外交的・平和的に解
決するというのは北朝鮮が嫌がることを一切してはな
らないということではない。北朝鮮を刺激することは
できるだけ慎むというのでは単なる迎合である。迎合
を「外交的・平和的手段」という美辞麗句にすり替え
てはならない。むしろ今回の外為法改正こそ本当の意
味で外交的・平和的手段を充実させるものなのである。
◆いつ発動すべきか
改正外為法が施行されたということは、法律の要件
さえ満たせばいつでも送金停止や貿易制限が行なえる
ということである。法律上は「我が国の平和及び安全
の維持のため特に必要があるとき」というのが発動要
件となる。では具体的にはどのような場合だろうか。
まず思い浮かぶのは北朝鮮がさらなる挑発行為・無法
行為を行なった場合である。核実験を強行した時、
再びテポドンを発射してきた時、あってはならないこ
とだが拉致被害者家族に危害が及ぶ時などがその典型
だろう。こうした時に制裁が可能なのは当然である。
ただこれは核実験などを行なわなければ制裁できない
という意味ではない。すでに現時点でも法律上の要件
は満たしている。これは重要な点なので立法者の意思
として明確にしておきたい。何の罪もない一般国民を
いきなり拉致するという国家的犯罪を行ない、その解
決に不誠実であるということそのものが「我が国の平
和及び安全の維持」への挑戦だからである。
現在政府は発動に否定的な姿勢である。私はもっと
前向きであるべきだと考える。制裁という伝家の宝刀
は乱用すべきではない。だが宝の持ち腐れにしてし
まっては法改正の意味がなくなる。外為法による経済
制裁というのはいろいろな発動方法がある。何もいき
なりすべての貿易・送金を止めるだけではない。段階
的な発動も可能である。例えば工業製品の輸出入だけ
を制限するということもありえる。こうした具体的手
法について政府内でより踏み込んだ検討が求められて
いる。
◆入港禁止法案について
最後に「特定船舶入港禁止法案」についても触れて
おきたい。外為法の改正が北朝鮮への圧力の第一弾と
すれば、こちらは第二弾となる。この法案も「対北朝
鮮外交カードを考える会」の6人で策定し議員立法を
目指している。
入港禁止の対象とする船舶は二種類ある。一つは北
朝鮮船、もう一つは北朝鮮に寄港した船である。後者
も対象にしたのは「便宜置籍船」という抜け道を許さ
ないためである。便宜置籍船とは節税などを狙って船
の国籍だけを便宜上リベリアやパナマなどに移すこと
である。「北朝鮮船」だけに限ると籍を他国に変えら
れたときに対応できなくなってしまう。
この法案は1月29日から自民党の関係部会で審議
が開始され、2月17日には法案要綱が部会で了承さ
れている。まだ部会での最終審議・政調審議会・総務
会という党内手続きは残っている。それでも昨年の
外為法が5月になって初めて部会の審議に付された
ことを思えば順調な進み具合といえる。安倍晋三幹事
長も前向きである。2月24日の読売新聞が報じる
世論調査によれば80%の国民がこの法案に賛成し
ている。こうした期待に応えるためにも成立に向け
て全力を尽くしていきたい。
*注1
「対北朝鮮外交カードを考える会」は02年12月に結成された。
メンバーは山本一太、菅義偉、河野太郎、増原義剛、小林温、
水野賢一の6名の衆参国会議員
*注2
アンケートを実施したのは「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会
(代表 横田滋)」「北朝鮮に拉致された日本人を救出するため
の全国協議会(会長 佐藤勝巳)」の両団体
当選者のうち外為法改正に
| 「賛成」 |
81.4% |
| 「反対」 |
0.5% |
| 「その他」 |
0.5% |
(当選者数480、回答者総計409)
当選者を各党別に見ると
|
賛成 |
反対 |
その他 |
| 自民党 |
87.7% |
0.0% |
10.3% |
| 民主党 |
80.1% |
0.7% |
17.8% |
| 公明党 |
83.3% |
0.0% |
13.3% |
| 共産党 |
0.0% |
0.0% |
100.0% |
| 社民党 |
0.0% |
0.0% |
100.0% |
*注3
修正協議の参加者は次の各衆議院議員
自民党・・村井仁、水野賢一
公明党・・漆原良夫、上田勇
民主党・・中川正春、松原仁、長妻昭
*注4
法案の提出者となったのは修正協議に参加した7名に渡辺周
衆議院議員(民主)を加えた8名である。
修正協議での合意を受けて、国会提出された法案は自民党案
に一部の修正が加わった。自民党案は第10条は第1項のみ
だったが、そこに第2項、第3項が追加された(それに伴う修
文上の変更も16条以下に若干あるがこちらは内容に関わる変
更ではない)。
第10条
2 政府は、前項の規定による閣議決定に基づき第十六条第一項、
第二十一条第一項、第二十四条第一項、第二十五条第四項、第四十
八条第三項及び第五十二条の規定による措置を実施した場合には、
これらの対応措置を実施した日から二十日以内に国会に付議して、
当該対応措置の実施について国会の承認を求めなければならない。
ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、
その後最初に召集される国会において、速やかに、その承認を求め
なければならない。
3 政府は、前項の場合において不承認の議決があつたときは、
速やかに、当該対応措置を終了させなければならない。
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