条件

 ここでは独自性・新奇性を主張して現状と掛け離れ、少人数・小規模の特殊解を計画するのではなく、多人数・大規模に
展開できるよう、現在提供されている主流の仮設住宅の住戸面積は変更せず、多少でも快適に生活できるよう、間取りのみ
を操作することにしました。

方針

●バンガロー風のリビング・アクセス
 仮設住宅の基本は、南面平行配置で、主に居室は南側、通路や玄関は北側ですが、敷地の確保が困難なので、できるだけ
たくさんの住戸を詰め込むと、隣棟間隔を接近させなければいけません。
 そうなると、せっかく南面の居室を掃き出し窓にしても、その前方を近隣住民が通行するので、レースのカーテンを常時
閉鎖しておかないと、落ち着いて生活しにくくなります。
 また、玄関廻りにウッドデッキを付設したり、植物を栽培している住戸も散見されますが、費用対効果を勘案すると、北側
は日照が期待できないので、うまく機能しているとはいえません。
 そこでここでは、玄関を居間とともに、日中居心地のよい南面に配置すると同時に、その前方にはウッドデッキを集約して
設置することで、近隣住民通行の際に生活の気配が感じ合えたり、行き来しやすくなり、視線を制御したければ、スダレ・
ヨシズや植栽等で対処できる緩衝領域としました。
 一方、寝間は閉鎖的な高窓にすることで、掃き出し窓のある居間が、なるべく開放的にできることを優先しています。

●水廻りの充実
 仮設住宅の床組は工事が容易なよう、全面フラットとし、そこにユニットバスを備え付けるので、浴室への出入口には、
昇降困難なほどの段差ができてしまううえ、浴室内に洗面台があり、入浴ための脱衣スペースが不充分なプランもあります。
 また、キッチンは、広さがあるのに、使いにくそうな家具・家電の配置となってしまいます。
 そこでここでは、洗面台を独立させて脱衣スペースとし、そこで床面の段差を1段分確保するとともに、キッチンを
コンパクトに整理することで、仮設住宅でも雑然としにくくなり、来客を気軽に招き入れやすくなるのではないでしょうか。

提案

6坪南面・北面                    9坪南面
 

12坪南面                       9坪・12坪北面