日本のかつての農村集落には、農業の生産と大家族が生活するのに都合がいい、大屋根の主屋がありましたが、近年では
家族構成や生活様式の変化に
対応できずに取り壊され、その大半は屋敷構えに不似合いな外観の住宅に建て替えられ、大変
残念な風景が散見されます。
 そこで、ここでは「現代の屋敷の主屋は本来どうあるべきか」について考察することにしました。
 設計条件は、次のように想定しています。
 ・家族構成:夫婦または単身
 ・規模:木造平屋建(一部2階建)

■空間構成
 南側をLDK+書斎、北側を和室+着替用の納戸とし、それらの回遊性を確保しました。
 老後には1階のみで生活が完結できるよう、1階の和室を家人用、2階の和室を客人用の寝室として想定していますが、
それまではそれらを入れ替えたり、夫婦別々の寝室としても対応でき、大勢の来客の際には、フスマを取り外せば、居間と
和室を続き間としても利用できます。
 玄関と水廻りは、若世帯等の別棟と連結すれば共用にもできるよう、あえて他の領域とは区画しつつも、和室と水廻りは
なるべく接近させています。


■外観形態
 普段は一人か二人の生活なので、面積は抑制しつつも、屋敷の主屋は物理的にも心理的にも中心的な存在なので、重厚感
を創り出そうと、屋根裏部屋のある寄棟の大屋根とし、深い軒の出で陰影をつけることで、落ち着いた雰囲気を醸成しよう
としました。