建主の選択
 建物を計画してから完成するまでは、おおよそ設計段階と施工段階に大別できますが、建主様が最初に直面するのは、
設計と施工を一緒の業者に依頼するか、それとも設計と施工を別々の業者に依頼するかの選択で、いずれの場合でも重要
なのは、信頼できる設計・施工業者を選定することです。
 設計事務所に依頼する場合には、別途費用がかかりますが、その利点は主に次の2つです。
 
第1に、設計業務は設計に精通している設計業者、施工業務は施工に精通している施工業者が、それぞれの得意分野で
能力を発揮できることで、特に住宅の場合には、生活の詳細まで精通しているとはいいがたい施工業者が大半です。
 
第2に、設計施工一体で依頼すると、シロウトの建主がクロウトの業者と複雑な作業の中で、すべてを判断・交渉・確認
しなければならず、大変な負担になりますが、建主の代理人と専門家の両方の立場である設計事務所が第3者として関与
すれば、その負担が軽減できるうえ、2者対立ではなく、3者が相互協力でき、建主様が満足する結果になりやすいのでは
ないでしょうか。


建築の工程
 例えば、戸建住宅の作業工程は、下図のように進行するのが通例です。

 建主様が当事務所に設計監理委託した場合、作業内容は主に次の通りです。

建築相談
 当事務所では、建築の設計・監理を主な業務としていますが、地域の調査報告や土地・建物の企画立案から簡単な家具
製作まで、生活環境・生活道具全般を対象にしています。
 相談は無料ですので、まずは電話かメールでお気軽にお問い合わせください。

調査・計画:1ヶ月程度〜

前提条件の整理
 建主様の要望や制約(家族構成・生活様式や予算等)の内的条件と、敷地自体・周辺環境の特性(法規制や設備状況、
周囲の環境、災害の可能性や地盤の性状等)の外的条件の、両方を計画に反映させるため、ご家族とのヒアリングや現地
・資料調査等で情報を収集します。

計画の立案
 前提条件をもとに、平面・断面・立面等のラフスケッチや概略模型で、家と庭の配置、外部形態と内部空間の構成、
所要室の採光(日照)・通風・眺望等の確保や、視線・動線の処理等を立体的に検討します。
 設計は、総体から細部へと展開していき、提案を了承していただくと、次の段階へ進行します。

基本設計:1ヶ月程度〜
 間取・外観や構造・設備等、全体を明確にする段階で、役所等に必要な図面を中心に作成します。
 
更地の場合には、敷地に実物大の建物と所要室の輪郭を縄張りし、間取の寸法を実感するとともに、隣家の開口部の位置
等を確認して調整します。
 当事務所では、建主様が計画に納得した段階で、設計・監理委託契約に締結していただきます。
 建物の骨格が確定すれば、地盤の試験調査や構造・設備設計も開始します。

実施設計:3ヶ月程度〜
 部分を明確にする段階で、詳細模型を作成するとともに、使用材料や建具・造り付け家具、設備機器等を設定し、見積や
工事に必要な図面や特記仕様書・構造計算書等を作成します。


工事請負契約の支援:1ヶ月程度〜
 建主様が大変困難な、施工業者の選定から見積依頼、見積調整や施工業者の決定、施工業者との工事請負契約の締結まで
を支援します。
 建主様の予算内に見積を調整する際に、設計を修正することもあり、この段階で工事範囲を確定します。

工事監理

確認・検査の手続代行・立会
 建築基準法では、建主が役所または指定確認検査機関に、建築確認や中間・完了検査を申請することになっていますが、
計画内容は設計事務所が詳細まで把握しているので、手続を代行するのが通例です。
 当事務所でも、建築確認申請書の提出→確認済証交付、中間検査申請書の提出→検査の立会→中間検査合格証交付、完了
検査申請書の提出→検査の立会→検査済証交付等の手続を代行します。

品質・工費・工程の監理
 着工から竣工までは、設計図書をもとに、現場を随時検査し、施工業者の各工事の品質・工費・工程を監理するととも
に、
建主様に適時報告し、現場の進捗状況にしたがって、工事費用の支払を承認します。
 施工業者作成の施工計画・工程表や施工図等を検討・承認したり、未決定の仕上材質・色彩等をサンプルを確認して検討
・指定したり、追加・変更工事による増減の見積を調整します。


設計監理報酬
 当事務所では、工事請負金額(消費税抜)×約10%+消費税を設計監理委託報酬の目安としていますが、建主様のご事情も
検討いたしますので、詳細は個別にご相談ください(リフォームも要相談です)

※敷地が遠方の場合には、別途で交通費がかかります。
※構造が鉄骨造・鉄筋コンクリート造の場合や、住宅以外の特殊な設備が必要な場合には、別途で外注費がかかります。


※木造2階建住宅・延床面積100m程度の確認申請+完了検査手続のみ(工事監理は除外)は、25万円〜(確認申請手数料
・完了検査手数料は別途)です。


※リフォーム
 一部の修繕・模様替や設備更新程度の改変だけだと、施工業者のみの依頼でも充分ですが、家屋が老朽化していたり、
家族構成・生活様式が変化し、今後の住まいや暮らしの総体を再考する際には、設計事務所に依頼するのが得策です。
 住宅の改修は、
既存家屋の現況も考慮しなければならず、新築よりも与条件が複雑になり、その判断が難解・難儀に
なりがちなので、それらを整理したうえでの提案があれば、方向性が明確化することから、住宅や生活に精通している
設計事務所と共同で作業するとよいでしょう。
 建主様が普段から改善・改良したい要望は最重要ですが、それとともに専門家を活用し、部位の老朽化や建物の耐震性
等、目の届かない部分にも気を配り、まず全体の現状を把握しておくべきで、つぎにそれらを反映した計画図面を作成
することで、相見積しても簡単に比較でき、工事予算と優先順位に応じた取捨選択が可能になります。

木造住宅の耐震性能
 まず前提として、役所の建築主事や指定確認検査機関による建築確認申請では、木造2階建住宅程度の物件は、構造等の
審査を省略し(4号建築物の特例
)、建築士と建築主の責任とされているので、構造が検討されているか注意すべきです。
 また、日本の耐震性能は、地震被害とその調査・研究とともに、徐々に基準が強化されてきた経緯があり、2000(平成12)
年の建築基準法の改正でようやく、構造の安全性が最低限確保できる段階になったといわれており、特に耐震規定が大幅に
改定された1981(昭和56)年以前の建物は、耐震性が低い可能性が大きいので、まずは早急に耐震診断すべきです。


‐建築基準法
 現在の建築基準法では、階数≦2、延床面積≦500m2
、最高高さ≦13m、軒高≦9mの木造住宅は、詳細な構造計算を
しないかわりに簡易な計算が必要で、それらは、
(1)耐力壁量の計算 : 地震力や風圧力は筋交や面材のある耐力壁が抵抗するので、必要な壁量を確保すること
(2)耐力壁の配置の計算 : 必要な壁量を確保していれば、それらをバランスよく配置すること
(3)柱脚・柱頭金物
の計算 : 構造材が一体となって抵抗するよう、接合部が先行破断しないこと
があり、これらは大地震・大暴風でも倒壊せず、中地震・中暴風でも損傷しない程度を最低限の基準としています。

‐木造住宅の耐震診断と補強方法(2012年改訂版)
 現在普及している木造住宅の耐震診断法を大別すると、内外装を引き剥がさず、目視調査のみの一般診断法と、内外装を
引き剥がし、構造部材を詳細調査する精密診断法がありますが、いずれも大地震での倒壊を判定する方法で(中地震での損傷
や暴風等は確認しません)、これは人命を最低限保護することを目的としています。
 したがって、構造の安全性が不安な住宅は、一般診断法から取り組むべきですが、補強工事の際には、家財も保護するため、
建築基準法の構造規定になるべく近づけるようにし、できれば余裕を持たせたいところです。