thinking of Jimbo's signature snare -神保彰モデルスネアについて考える-
さてみなさん、スネアは何を使ってるでしょうか。
スタジオ備え付けの人もいれば、マイスネアを持っている人もいると思います。
ちなみに自分はLadwigのblack beautyとYAMAHAの神保彰モデルのスネアを使っています。
今回は後者の神保彰モデルのスネアについて考えてみたいと思います。
ところでこのスネア、非常に個性的で研究のし甲斐があるスネアなんですよ。
作り手の狙いがすごく伝わりやすいスネアなんじゃないかなと思うわけです。
これを通してスネアに関する知識が増えたり、スネア選ぶ時の参考材料にしてもらえれば幸いです。
なお、毎度のことながら独断が入っていて結構てきとうなんでそこんとこよろしくどうぞ。

1.外観及びスペック

正面から 裏から
正面から 後ろから

・シェル:オールビーチ8ply、ホワイトスパークル、エッジ角35°
・サイズ:13×7インチ
・フープ:ウッドフープ19ply
・ラグ:クロームスモールラグ6個
・スナッピー:ハイカーボンスティール14本

2.特徴

・独特なサイズ
13×7という独特なサイズがこのスネアのキャラクターを決定付けています。
13"という口径で得られる高音と抜けと粒立ちのよさに加え、7"という深さで音量、低音の不足をカバー。結果として高音の抜けと低音の豊かさをうまく表現できていると思います。

・ウッドフープ
ウッドフープとスネアの相性が良いんです。
高音の倍音が耳障りになってしまうオープンリムショットも非常にやわらかく抜けが良く、クローズドリムショットもナチュラル。金属製のリムにありがちなヒステリックさがなく、スネアのキャラクターをクリスピーにしています。バームクーヘンみたい。

・シェル
シェルの材質はビーチ。
ビーチ材の特徴として、中低音の豊かさとアタックの鋭いことが挙げられます。これは意図的にメイプルでは出せない音を狙ったものと考えられます。
おそらく神保氏の細かいフレーズにも対応できる粒立ちの鋭さと、13"という口径上失われがちな低音を補うためにこの材質を選んだものと思われます。粒立ちに関してはシェルのエッジ角を鋭角にしてある(35°)ことからも、重要視していたことが伺えます。

・ラグ
次にラグについてです。
ラグはスモールラグといって小さいサイズのもの。ラグ数は6。つまりシェルに余分なものを極力付けたくなかったことが分かります。これにより、オープンな鳴りが見込めます。「スコーン」よりも「スカーン」に近い音が欲しかったのでは。
ただし、ラグ数が少ないということは鳴りがオープンになる代わりに、チューニングに影響を及ぼします。当然のことながらフープとシェルの締め付け箇所が少ないので細かいチューニングは苦手です。あと、ハイピッチにおいては一つ一つのラグにかかる負荷が大きくなるのでシェルに負担をかけます。

・スナッピー
スナッピーはハイカーボンスティール14本。
ハイカーボンスティールという素材はよくわかんないけど、おそらく硬質なスティールで食いつきの良さを狙ったものでしょう。そして14本という本数から、さらに粒立ちを意識したものだということが分かります。
このスナッピーもスネアのキャラクターに大きな影響を与えています。スナッピー音が少なく、クリスピーなかん高いスネアサウンドに欠かせません。

3.問題点

そりゃ、ありますよ問題点。まずキャラが強すぎて使えるジャンルが狭いこと。これほど個性的なスネアなもんだからチューニングも限られてきます。何だかんだでこのスネアが一番力を発揮するのはハイピッチなわけで。それでもローピッチでも13"と思えない低音が出ます。ただやっぱり中音域の不足は否めません。
次に一番の問題、ウッドフープ。
やわらかい音で人気のあるウッドフープですが、フープ裏面のスナッピーを通す箇所に多少難ありです。まず下の写真を見てくださいよ。

側面からの図
スナッピーを通す付近を拡大したもの

これ見てわかりますかね?ウッドフープに金属の棒が刺さっているんだけど。
フープを上から見るとこんな感じです。

普通フープの裏側はスナッピーを通すために穴を空けるのですが、金属製のフープと違ってウッドフープでは穴を空けてしまうと、強度面で不安が出ます。穴を空けた箇所が細くなりフープの締め付け加重に耐えられない可能性があるからですな。
ウッドフープの場合その問題を解決するためにスナッピーを通す穴のところに金属製のバーを付けて強度を補強しているわけなんです。実はこの金属のバーに問題あり。この金属のバーの部分だけ締め付け荷重のかかる力が異なるわけです。
具体的にいうと、ここ以外のフープの部分がヘッドに対して面接触であるのに対して、金属のバー部分だけ点接触になってしまいます。このことにより、金属のバー周辺の締め付け力が著しく低下するわけです。フープを側面から見てみると力の分布は下のような感じ。

お〜、ゆるくなってるっぽい。
実はスナッピー周辺のヘッドはスナッピーが反応する部位だから一番シビアな部分なのです。そこがゆるいとスナッピーの反応に直接影響が出てきてしまいます。
ちなみにこのスネアでは、ボルトをまわす回数をすべて等しくしてチューニングしていくとスナッピー周りのヘッドにしわが出来てしまいます。つまりこの部分がゆるく均等に張れていないということです。それを補うためにその周辺のボルトを余分に多く回す必要が出てきます。そうすることによってシェルに均等な力がかからず、シェルを傷める原因になってしまいます。
YAMAHAはこの辺甘いよね。もっとこのへんを改良するべきだったと思います。せめて棒ではなく板状の金属で補強して欲しかったですよ。そうすれば多少は改善されただろうに、と思います。
ちなみにこれは金属製のフープでもホント多少だけど発生していることだと思うので、意識的にスナッピー周りはボルト少し強めに締めてもいいかもしれません。

とまぁ、ざっとこんな感じです。
ここまで個性的なスネアって結構少ないと思うんですわ。
いろんなスネアでも目を付けるべきポイントっていっぱいあるってことですな。
…、ということが伝わってくれたらこれ幸いです。
さぁ、みなさんもお気に入りの一台を手に入れてみては。

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