カンタンな物語紹介

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落窪物語

平安朝の物語の中で、飛鳥が一番好きなのは、この『落窪物語』です。

いわゆる、日本版シンデレラ、の物語。

落窪物語は、四巻の物語です。現代語訳は、前半部分の主人公の恋とそのスリルの面白さを紹介しているものがほとんどですね。それだけでも充分楽しい読み物なんですが、平安文学を勉強している人には、後半部分こそおすすめしたいです。

四巻全部通して読むと、当時の貴族の有り様が、参考書や便覧の解説よりもよくわかります。ただし、それは貴族を中心とした世界です。一般庶民の生活の記述がいま一つなのは、文字の読み書きのできたのが上流社会の者だけだった弊害でしょう。

飛鳥は、この物語の全訳を、高校生の時に読みました。古典体系云々という全集の中にあったんです。当時は、古文のまま読むなんてできなかったから(言葉も文法もわからなかった)、小さな文字の現代語訳を必死で読みました。なんで必死なのかと言うと、文字数は、古文より現代語訳の方がはるかに多いんです。二倍から三倍はあるんじゃないでしょうか。そんな訳で、一週間の返却期限に間に合うように、寝る間も惜しんで読み切りました。

そのおかげかどうか怪しいのですが、飛鳥は、大学進学時に、英米文学科ではなく日本文学科を選びました。四年間、国語三昧の日々。この落窪物語と万葉集を読んでいなかったら、きっと日本語自体に興味を持たなかったんじゃないか、と今では思います。



万葉集

いわずとしれた、日本最古の歌謡集。短歌集ではないので、間違えないでください。長歌、短歌、旋頭歌、仏足石歌、他もろもろの形の歌が収められています。

この『万葉集』について、飛鳥は多くを語れません。大学入学から数えて、十数年、未だに全部読み切れていないので。

飛鳥は、和歌より物語が好き。つまり、詩や歌より、長文を読む方が好きなんです。だから、ついつい詞書や解説を先に読んじゃって、肝心主役の歌を読まずにページをめくってしまい……読破ならず、です。



伊勢物語

源氏物語が好きな人、これから勉強したい人は、読んでおいた方が良い物語です。何故ならば、源氏物語の作者紫式部もきっと読んだに違いない物語だから。

『伊勢物語』は、歌物語といわれています。

万葉集をはじめ、和歌集には必ず詞書が添えられています。伊勢物語は、この詞書が長く詳しく書かれたもの、と思って間違いないと飛鳥はみています。そして、歌より詞書の方が面白いという現実は、仮名文字の普及とともに、想像力豊かな物語の素地を作りだしたのではないでしょうか。

どれも小段落なので、どこから読んでもOKです。古文に慣れたい人が、最初に挑戦する読み物として、おすすめです。



更級日記

日記という形をとった物語です。作者は明らかに、人に読ませるために書いています。これも小段落が続くので、初心者には読みやすいです。

どうやら作者は、年をとってからこの物語を書いたようなんですが、その記憶力の素晴らしさには脱帽です。そして、源氏物語を読めてうれしい、と言う記述が見えますから、この更級日記の作者は源氏物語を読破した人であること、間違いなしです。

作者は中流貴族なので、深層の令嬢という育ち方はされず、物語は、それなりの幸せを得るためにがんばってきたんだよ、と共感を呼ぶ内容です。更級日記が書かれた時代は、すでに平安時代も終わりを告げようとしている頃。源氏物語にならい、沢山の物語が書かれた時代でもあったのです。現代では失われた物語も多い中で、こうして更級日記が読めることは、如何にこの物語が読者の支持を得てきたかということを物語っていますよね。



竹取物語

かぐや姫の物語として、有名です。

これは、日本最初の物語、と称されるほど、作成年代の古い物語です。作者は僧侶なのでは、と思われるほど、仏教関係の記述が見受けられます。まるで、中国の昔話や伝承を読んでいるようだと、飛鳥は感想を持ちました。

これを古文で読むことは、あまりおすすめできません。ただでさえ、平安時代の言葉は現代語と比べると意味の違いがあって読みにくいのに、竹取物語はさらに上をいく難解さです。

でも、更級日記、伊勢物語を読んだ人は、挑戦してみても面白いかも。時代によって言葉は変わる、を実感できます。内容も、良く知られたものですから、現代語訳との違いを楽しむのもいいですね。

それから、歴史上の出来事を垣間見る機会を与えてくれる点でも、竹取物語は貴重なものです。富士山の名前の由来、不死の山、という言葉から、当時の富士山は噴煙を上げている活火山だったという推測ができるそうです。詳しくは、物語の最後の方を読んでみてください。

おおよそのあらすじは、こんな感じ。

かぐや姫が月に帰ってしまった後、帝の手元には、姫が形見にと残していった、月の世界の薬が残された。悲しみの中で、帝はその薬を、高い山のてっぺんで燃やせと命令をする。臣下が日本一高い山へ登って、その薬を燃やした。その山からはいつまでも煙が天へと立ち登っていた。



御伽草子(おとぎそうし)

 室町時代から江戸時代初期にかけて、伝承を集めて物語化したものです。日本の昔話のふるさと、ともいえる物語群です。「浦島太郎」や「一寸法師」の原型がみられます。昔話を研究するなら、読んでおくといいですよ。

 平安文学と比べると、言葉が現代語に近いので、とても意味がわかりやすいです。古文が苦手で困っている人は、一度ためしてみてはいかがでしょう。



源氏物語

 日本の物語の傑作として名高い『源氏物語』。その物語が書かれた時代は、西洋でみると『カンタベリー物語』が書かれた時代より前、というから、日本は物語の素養に恵まれていたと言えるでしょう。

 でも、読む方にとっては、これほど厄介なものはないかもしれません。

 第一に、長い。五十四帖あるといわれ(実質五十三)、第一部、第二部に分かれている。
 第二に、登場人物がやたら多い。五十四帖もあれば当たり前か。
 第三に、現代語じゃない。当然といえば当然だが、古語がたくさんあるから意味を解するのが困難。

 それでも、現代語訳ではなく、古文で読むことを敢行した飛鳥です。理由は、古文の方が文字数が少ないから。角川文庫の源氏物語にお世話になりました。これは、悲しいくらい解釈が載っていない本でした。第一部を読みおえ、宇治十帖へとつづく前座を読みおえた所で降参しました。

 意外にも、単語の意味がわからなくても、少々の文法知識があれば、文意はわかるものです。頭の中で、簡単なあらすじが記憶されていきます。わからないなりに面白いから、不思議です。玉葛の話など、読んでいるときは「わかんない、つまんない」だったのに、読みおえた今では、好きな話となっています。

 一度おためしあれ。



カンタベリー物語

 これも古典だろうと思うので。

 14世紀、チョーサー作。イギリスのカンタベリー大聖堂へ参詣する、巡礼者の一団の物語。ひとりが一つの話を語るオムニバス形式で、24編、しかも未完といわれています。

 恋物語が面白かったです。他にもいろいろな話がありました。騎士の時代が終わり、ルネッサンスが興る前の、暗黒の時代といわれる中世が舞台。人間の喜怒哀楽は何処でも同じ、と妙に納得してしまった物語でした。



(C)飛鳥 2003.2.16

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